遠藤代表理事による挨拶

5月9日(土)、クーポール会館にて、第42回定時総会が開催されました。出席者93名、ご来賓に渡辺吉章氏(静岡県経済産業部商工業局長)、伊東暁人氏(静岡大学副学長)、山本義彦氏(静岡大学名誉教授・静岡同友会顧問)をお招きしました。また、記念講演として「経営指針に基づく、ゆるぎない経営を目指して」を演題に、京都同友会の岩島伸二氏(京都エレベータ㈱)にご講演頂きました。

初めに遠藤一秀代表理事(遠藤科学㈱)より挨拶がありました。「リーマンショック以降、静岡の経済情勢は芳しいものではない。全国では景気回復が本格化したとの声もあるが、まだ地方や中小企業にその波が遍く届いてはいない。円安の影響等による突発的・限定的な景気の上向きではなく、それぞれの地域の経済が復活しなければ、本格的な景気回復とはならず、そのためにも、地域に根差す我々中小企業家同友会の活動は重要性を増しているという事を自覚し活動していきたい」とのお話を頂きました。また、渡辺氏からは「景気回復には中小企業の持続的な発展が不可欠と、国・県とも様々な支援策を実施している。中小企業の企業活動が活発になり、経営が元気になる事が、県経済の底堅い景気回復につながる」、伊東氏からは、「地方に定着し頑張る若者を育てる事が、大学を含めこれからの教育機関に求められる責務である。彼らの受け皿となる地域企業の存在が重要となる為、同友会の活動を通じ、活力・魅力ある企業となって欲しい」とのご祝辞を賜りました。

中同協会長の鋤柄修氏からは、「厳しい状況下にあっても、全国の多くの同友会は会勢を維持し、発展させるために懸命の努力を続けている。静岡同友会においても増勢を強め、日本と地域を元気にしていくためにも、同友会の学びあいの輪をいっそう大きく拡げて欲しい」との祝電を頂戴しました。


2015年度 新役員挨拶

本年度の重点課題は3点です。

  1. 経営指針を成文化し、社員との共有・実践で、時代に対応する強靭な企業づくりを進めます。
  2. 中小企業憲章推進の運動を広げ、中小企業振興基本条例制定をめざします。
  3. 元気な企業と地域をつくるため、会員増強目標1200名を早期に達成します。

これらの重点課題を羅針盤と位置づけ、企業づくりと同友会運動を一体のものとして前進させていくことが確認されました。社員と共に経営指針を実践し、雇用創出や仕事づくりをしていくことで、多様化する経営課題を乗り越えていくことが求められます。


表彰を受ける穂坂勝彦氏(富士宮清掃㈲)

続いて、2014年度の仲間づくりに大きく貢献した会員3名の表彰が行われ、藤原博美氏(㈱日本ベルト工業・沼津支部)、穂坂勝彦氏(富士宮清掃㈲・富士宮支部)、海野敦氏(海野サッシ商会・静岡支部)に賞状と、副賞として全国三大行事の参加費一式の目録が贈呈されました。


同友会理念と共に歩むリーダー達 2015年度 新役員 集合写真



報告者:報告者:岩島 伸二氏
(京都エレベータ㈱・京都同友会代表理事)


京都エレベータ株式会社

創立:1983年12月

資本金:1,000万円

事業内容:エレベーター、エスカレータ、ダムウェータの保守点検、修理、販売
検査、設計、施工。及びこれに付随する一切の事業。
立体駐車装置、建築設備等の保守点検、修理、販売、設計、施工。


京都エレベータ㈱は1983年12月に設立、年商約6億5千万円、社員数62名(協力業者含む)の、主にエレベーター・エスカレーター・立体駐車装置等の定期点検・修理・法定検査・改修工事を行う会社です。岩島氏は、会社が成長する中で社員教育の必要性を痛感していた折に同友会と巡り合い、会の目指す経営者としてのあるべき姿を学び、社員共育の真髄と出会いました。

同友会の社員共育・求人委員会では、経営者が変わらなければ社員も会社も変わらない事を教えられ、自ら変わる事を求められました。岩島氏は自分を変える事の難しさを実感しながらも、少しずつその実践に取り組みました。同友会の共育のバイブルとも言われる書籍『共に育つ』には、「その気にならない限り人は変わらないものだ」と教えています。また、「経営者がどんな動機で経営を始めたとしても、従業員との共同、協力こそが企業存続の条件である。だから同友会は労使が共に育ち合える土壌づくりをして共育に取り組まなければならない」と教えています。そのために同社も、2000年から経営指針書を社内で発表し、社員と共にその作成と実践に取り組んでいます。

最後に岩島氏は「経営指針書に基づく経営を実践している企業は黒字である」という中同協の調査を挙げ、「会員全てが経営指針書を作成し、真剣に企業経営に取り組めば黒字化する」と経営指針書の作成、社内浸透、実践の重要性を報告してくださいました。

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経営者の役目~岩島氏の決意とは?~

「会社は何を目指していかなあかんねん!!」岩島氏は、会社設立からこれまでの様々な苦労話を飾らず真っ直ぐに話してくださいました。独立系のエレベーター保守会社として技術者仲間4名と事業を開始された当初は朝礼もなく、みんなでコーヒーを飲みながらのんびり仕事を始めていたそうです。しかし社員が14名に増加した1992年、社員教育を痛感し同友会に入会します。共育委員会に参加しますが教育のノウハウは教えてもらえず、まず自らが変わることを求められ、2〜3年は話を聞いて帰るだけ。1996年に20名近い社員数になって、経営者自ら変わる決意をします。初めに技術者ばかりの役員の意識改革の研修。18時から21時まで月2回を6ヶ月間、外部講師を招いて実施。続いて一般社員研修。自己啓発セミナーにも出会い、社員全員を1年間かけて参加させます。「何の為に我々は仕事をしているのか?」「何の為に会社は存在しているのか?」「なぜ会社は利益を上げなければいけないのか?」「その為に自分はどんな風に努力をしていかなければいけないのか?」を考え、お客様を大切にする姿勢や自分達が会社を支えていくんだという姿勢が生まれてきたのだそうです。そして社員の方から経営指針書を発表してほしいという要求があがってきます。

岩島氏の決意とは何だったのか?私は、経営者自ら会社の売上げのために頑張る決意ではなく、社員ひとりひとりが喜びを持って働くことのできる意識作りが経営者の役目であるという決意だと思いました。最後に岩島氏は大きな声で語ってくれました。「黒字になるのは簡単や!経営指針書を作って実践すればいいんや!」できていない自分の心に痛みがあったのと同時に励まされた気がしました。

松下 恵美子氏(三協紙業㈱・静岡支部)


人を惹きつける、挑戦する経営者の姿

「我が社は、メーカー系列ではない、独立系のエレベーターメンテナンス会社です」。エレベーター業界の実状とメーカー縛りの厳しさを経験から知っていた私にとっては、この言葉の持つ重み~岩島氏が茨の道を歩んできた挑戦者であること~をすぐに理解することが出来ました。「会社を変えるためには、まず経営者自らが変わらなければならない」と同友会での学びを深め、組織の上部から意識改革を浸透させることで、経営指針に基づいたゆるぎない経営を実現させる。事業継承の準備を10年前から行い、全ての問題をクリアにした上で親族以外の後継者に全権をバトンタッチする。どちらの長期ビジョンも、実現に至るまでの様々な努力~行動力・忍耐力・継続力~は、相当なものであるはずなのに、それを京都人らしい柔らかな関西弁と温和な表情で他人事のように淡々と話す岩島氏の姿に、とても真似の出来ない器の大きさを感じました。

下京支部が、一昨年度90名もの新会員入会を達成したのは、岩島氏のような挑戦する経営者が身近にいたことが大きな理由のひとつである、と確信した記念講演でした。

稲原 研氏(松屋電気商会・富士宮支部)

5月17~18日にかけ、志太温泉 潮生館にて正副代表理事会が行われ、12名の正副代表理事・正副会長が集まりました。

当日は「2015年度ビジョン」の進捗・達成度を振り返るとともに、どのように働きかければ達成度がアップするかを協議しました。

各代表理事が所属する支部の指針成文化に係る活動についての報告の後、「リーダーは『同友会が目指す指針』を深く腑に落とし込み、整理する必要がある」「自社の経営指針の発表・進捗報告と例会報告がリンクすれば良い」等の意見が挙が
りました。

続いて「中小企業が主役の経営環境づくり」、すなわち憲章・条例制定運動についての確認・協議がなされました。人口減少や人口流出等、大きな社会問題が待ち構えているなか、地域を魅力あるものにするのは中小企業であり、「地域づくりの仲間」としての増強、「地域づくりの環境整備」としての条例制定運動が必要である、との声が挙がりました。中小企業振興条例制定運動とは、中小企業や地域の未来を考える基礎づくり、中小企業の働ける場づくりのための運動であるという意見が挙がりました。
会員増強については、「同友会で学んだ人が “良い経営” を実践しなければ説得力が無い」「増やすだけでなく、減らさないこと。そのためには、各々が “同友会にいる意味” を考え、認識することが大切」との意見が挙がりました。

これらの協議を踏まえ、2020年ビジョン策定に向けて動き始めました。

正副代表理事・正副会長が一堂に会し、長時間議論や意見交換をする事で、静岡同友会を中心に地域を考える機運が一層高まりました。

国吉昌晴氏(中小企業家同友会全国協議会 副会長)を講師に招き、「今こそ原点回帰」をテーマに同友会の設立から今日に至るまでの活動、理念、同友会とは何か、地域に果たす役割を語って頂きました。

1973年に同友会の3つの目的がつくられ、その2年後に「中小企業における労使関係の見解」=労使見解が発表されました。多くの中小企業家が人間尊重経営をめざし、労使の信頼関係を構築する中で、共育ちを基本に据え、労使見解の精神を踏まえた経営指針の成文化と実践運動へと深化していきました。

2000年には、地域にやさしい金融システムの確立をめざし、全国各地で金融アセスメント制定運動に取り組みました。そして中小企業憲章を提起し2010年に閣議決定され、いま中小企業振興基本条例の制定運動へと繋がっています。地域の産業
や経済が衰退し、その危機感から全国で中小企業振興基本条例制定運動が広がっています。地域をどう元気にしていくのか、金融機関、行政、他団体と協働して知恵を集め、中小企業が光輝く地域社会へと変えていくことが求められています。

全国会員数は、45,000社にのぼります。静岡同友会の中で、榛原支部は高い組織率を持っており、地域であてにされる経営者団体として、さらなる飛躍を遂げてほしいとエールを送られました。

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■例会に参加して

同友会の3つの目的「よい会社をつくろう」「よい経営者になろう」「よい経営環境をつくろう」の中で、同友会の強みは、2つ目にある「よい経営者になろう」ではないかと思います。よい会社、よい経営環境を目指す中で、お互いの会社の経営指針や失敗談等を聞き、謙虚かつ素直に向き合います。そして、経営者として学び合い実践することが、自身の向上と、社内や地域に伝わり同友会の3つの目的を大きく延ばしていくのだと、国吉氏の話から教えられました。新しい会員は勿論の事、ベテラン会員も、いま一度同友会の原点・役割等を学べる例会になりました。

松本 紳哉氏(㈲川本工業・榛原支部)

伏見修氏(㈱富士山ドリームビレッジ)の卓話が行われました。

同社は障害者就労支援の事業を行っています。伏見氏は知人と会社を立ち上げ、創業時はナンバー2としてご活躍されました。会社は順調に伸びていきましたが、浜松で大きな事業の失敗を経験されます。そのことが転機となり、本人もその気はなかった社長に就任します。社長に就任してからは、あらゆる事を精力的に勉強し、浜松での事業の失敗を取り戻し、大きな利益を残すほどの会社に成長されました。今後の課題としては、スタッフへの理念の浸透、10年、20年後の仕事を考えていくこと、長期借入の返済等を上げられていました。

伏見氏は今、売上10億円への経営計画の作成と実践に取り組んでいます。そして、順調に計画通り進んでいるといいます。伏見氏の勤勉さに感心させられた参加者も多く、大いに刺激を受けた例会となりました。

藤本 浩氏(プリントバリュー㈱・静岡支部)

会歴15年以上のベテラン会員が所属する交友委員会設営の例会が行われました。勝間田元交友委員長をコーディネーターとし、パネラーに迎えたのは経営においても、人生においても円熟期を迎えた先輩経営者5名。会場は中心にパネラー席を設置し、その周りを取り囲むように聴講者が座るという、若手会員とベテラン会員の距離を縮めるレイアウトがなされました。

先輩経営者がこれまで経験し、苦労してきた理念浸透、人育て、事業承継や同友会での学びの実践の披露。また同友会後の飲み会での激論の様子。「本気で語れ!熱く語れ!」との若手に対する思いも伝わりました。

例会中は周りを取り囲む会員にもマイクを向け、活発な質疑応答をし全員参加の例会となりました。思惑どおり「還暦オヤジ」の人となりも見ることができ、聴講した会員も、同友会の辞書の人名の部でのページが更新されたことでしょう。支部創立30周年を迎えるにあたり、有意義な例会となりました。

藤森 利彦氏(㈲魚森・御殿場支部)

松田一哉氏(清栄メンテナンス㈱)が、自分の人生、会社の創業、今の悩みを発表しました。

トラックの給油中ふと見上げた先に、切れかけた電球や天井の汚れが目に留まり、「これは商売にならないか」と考え、起業します。スタート当初は受注が少なく1年目は年商30万だったのですが、そこからホームセンターに入り浸り、洗剤の成分から自分なりに研究し、お客様のニーズにあった洗剤や施工方法を編み出しました。「掃除はアートだ」と松田氏は語ります。

悩みである人材確保について、少子化の影響から今後は外国人・障がい者雇用を考慮する必要があるが、環境整備の課題をどう解消するか悩んでいる、と言います。他にも、人が捉えている感覚の齟齬、お客様のクレーム、値段が足元を見られている等様々な悩みが出てきました。自社にも当てはまることがあり、いかに対処するかが現場もしくは会社にとってプラスになることを気づかされました。

バズテーマ「あなたの会社は匠を目指しますか?拡大をめざしますか?」については「匠を目指せば自然と拡大につながる」「拡大を目指したいが怖さがある」など、各社の現状を反映した様々な意見が挙がりました。「悩む」とは会社の岐路に立っている事であり、社長の決断を社員は待っています。今回の例会は、その悩みを相談し議論できる場となりました。

田中 玄徳氏(㈱さなえ・沼津支部)

入澤清吉氏(㈲入澤保険サービス)による、自動車保険についての報告が行われました。

保険契約における基本的な通知義務から各種特約などの概要説明がなされた後、①年齢によって割引があるが、以前と違い今は同居でなければ保険が出るようになっているなど、保険が変わってきたこと。②今は本人限定などもあるが、入澤氏としては「いかがなものか」という意見。③「限定」については、付けると多少安くはなるが、もしもの事を考えるとなるべく付けない方がよいという利用者目線のアドバイスも行われました。

報告の後、「あなたの事故体験と保険の疑問」とのテーマでそれぞれの体験談を交わし合いました。

このグループ討論を通じ、「ぞんざいにしていると、従業員もおざなりになる。きちんとしていると従業員の意識も変わる」「経営者としては日頃から管理をしていくことが大事。」 と、保険業の枠を超え、自社に生かせる教訓が共有されました。

「リーガルマインド(法的思考)」とは、法律の実際の適用に必要とされる、柔軟で的確な判断の事です。「法やルールは道具。合理性、妥当性、結論のバランスや論理性に基づいて使いこなし、結論を出すことが重要。リーガルマインドは、その基礎になる考え方」と増本志帆氏(大石康智法律事務所)は語ります。思考・判断においては、事実と意見を切り分ける事、対立する利益に配慮する事、双方の言い分を聞いてから判断する事が大切、との事です。配慮やバランスを欠いた結論は信頼を損ない、バランスのとれた結論は信頼の獲得につながる為、双方の話を良く聞き結論のバランスを取るなど、社内ですぐ実践できる内容でした。

参加者からは「家族経営の会社では、気心が知れているだけに意見で対立する事も多いが、事実に基づいた妥協点を見出す事で、その対立も緩和・回避できるのではないか」「対顧客となると『相手の意見を飲む』という事も多いが、思考や対応の手順を整理する事で場当たり的な対応は避けられるのではないか」という意見が聞かれました。

須山 由佳子氏(㈲キャリア・アップ・浜松支部)

志太支部2015年度が新たなチーム体制でスタートしたことを受け、今年度の支部スローガン「原点から攻める」に基づき、フレッシュな会員さん達に登場してもらいました。


山田 幹也氏

第一部では、第11期創る会を修了し、今年度から支部内新チームのリーダーになった山田幹也氏(㈱立花ガーデン)による報告「花と緑で幸せな笑顔をつくる企業を目指して」。第二部では、新チームの副リーダーとなった河原崎茂則氏(㈲かわでん)、橋本武彦氏(㈱丸橋運送)、水野芳康氏(㈱水野建築事務所)、第12期創る会を受講する下坪力氏(㈱潮生館)の4名が、自社の現状と展望、課題を発表しました。


河原崎 茂則氏

橋本 武彦氏

水野 芳康氏

下坪 力氏

全5名の発表を聞いて、経営者自らが思い描く理想や夢を「使命」と信じ、進んでいくことの大事さを改めて再認識できました。

「新会員増強例会」という位置付けでもあった今回は、6名のオブザーバーの参加がありました。フレッシュな会員を中心とした活動報告は、オブザーバーの皆さんにもきっと良い「お土産」になり、今後の会員増強にも繋がっていく事と思います。

大石 貴啓氏(タイケイ㈱・志太支部)