【写真】富士工芸 若月 厚志氏

【逸品】一生使える、オーダーメイドのカウンター

会員企業名 富士工芸 創業 1998年6月
会員名 若月 厚志 業種 木工業
所属支部 富士支部 社員数 正規2名
会暦 2013年6月入会 事業内容 特注家具・建具、木製品
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親子二人三脚で工房を切り盛り

富士工芸は富士山の南側、富士市大渕にあり森林に囲まれた中にひっそりと工房を構えます。平成9年に自然に恵まれた場所で富士工芸は若月氏の父により産声を上げました。「一生使えるオーダー家具、建具」を合言葉に、発注元やお客様の細かい要望に応え設計、製造しています。

若月氏の入社は平成25年。それまではサラリーマン生活をしており、父の仕事を横目で見ながら、いつかは父の仕事と継ぎたいと思っていたそうです。そして念願叶い富士工芸に入社。現在は親子二人三脚で工房を切り盛りしています。

 


「愛着を持って家具に接してほしい」

先日、お客様に無垢のテーブルを納品したときに「これは一生使える」と言われました。現在使い捨ての時代です。新しい物もいいですが、大事に扱い長持ちさせることを若月氏は訴えています。「それが一番のエコになるんです」 

「一生使えるオーダー家具、建具」、若月氏の思いは家具、建具のリメイクにも力を入れており、アフターサービスにも気を配るそうです。良いものを長く使ってもらう、その思いが伝わってきます。

 


同友会で学び、意識変革

今まで、目の前の仕事をこなしているだけでした。委員会、部会にも積極的に参加することで意識が変わっていったそうです。初めは戸惑うことばかりでしたが、今では同友会で学んだことを会社に取り入れ、設備の見直し、新たな従業員の雇用等を計画しています。

 


今後の展望「ショールームを持ちたい」

現在は主に施設、店舗等への仕事が多いそうですが、今後は「来て、見て、触れる」ショールームを持ちたい、とのこと。そして夢はブランド化。5月から富士支部で始まる「もうかる委員会」にも参加して経営指針作成にも着手し、着々と夢への実現に向け奮闘する若月氏でした。

左から、高田磨人氏、若月厚志氏、畑中和弘氏

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取材・記事:畑中 和弘氏(ハタナカ特急便・富士支部)
取材:高田 磨人氏(天ふじ・富士支部)


講師 河野 通洋氏(㈱八木澤商店 代表取締役・岩手同友会)

株式会社八木澤商店
創業:1807年/設立:1960年1月
事業内容:食品製造業(しょうゆ、味噌、漬物、その他しょうゆ加工品)
経営理念:
一、私たちは、食を通して感謝する心を広げ、地域の自然と共にすこやかに暮らせる社会を作ります。
一、私たちは、和の心を持って共に学び、誠実で優しい食の匠を目指します。
一、私たちは、醤の醸造文化を進化させ伝承することで命の環を未来につないでゆきます。

「指針を創る会」をきっかけに得た気付き

厳しい経営状況の会社に後継者として戻った私は、営業・企画に奔走したほか、抜本的な再建が必要と、書籍を元に「指針書」を作成。今思えばこれは「命令指示書」でしたが、数字は改善しました。社内会議も開きましたが、それは社員の「できない」を問い質す場でした。「営利集団」を建前に人間関係を否定する当時の私は、何か勘違いをしていました。

そんな頃に誘いを受け、宮城同友会へ入会。「指針を創る会」にも参加したのですが、私は自作の指針書を指摘してもらおうというスタンスでした。しかし始まってみると一向に指摘してもらえず、同期が自己変革の実感に涙するのを横目で見るばかりのまま5ヶ月が経過。「このままではまずい」と同期に助言を求めると「数字の話しかしない社長の下で働く社員は地獄だ」と叱咤されました。その帰り、初めて苦悩し、形だけの理念も腑に落ちなくなります。指針について初めて社員と勉強会を開催したところ「良いのがありました!」と社員が持ってきたのは、稲森和夫氏が京セラ時代に掲げた経営理念でした。


岩手同友会気仙支部の発足

新たな指針を作成後、会社を良くしたいと思い、新卒採用をはじめ様々なことに取り組みました。その中で、宮城同友会会員に会社で報告してもらったり、社員や仲間を同友会につれて行ったりするに連れ「同友会っていいな」という声が増えていきました。ここから、陸前高田で支部立ち上げの機運が高まりました。「行政が展望を示せない地域で同友会は成り立たない」との声には「自分たちで展望を示せばいい」と反論し、苦労の末に岩手同友会気仙支部を立ち上げました。スローガンは「一社もつぶさない」。指針成文化と一社毎年一人採用を目標に掲げ、年代の垣根無く関わり合いました。


東日本大震災の中、地域一丸で「一社もつぶすな」

その後の2011年3月11日、東日本大震災が起きました。地域の人口の7割強が犠牲になり、建物の8割が全壊。地域の会社は10%強しか残らず、当社も全壊し津波に呑まれました。私は無事だった会員企業の社屋の一部を借りて事務所とし、全国からの支援物資を同友会で被災者に配布。この時から、気仙支部の活動=倒産防止の活動を再開しました。まず県内全ての銀行に、自動引落とし停止の確約をもらいました。また、雇用を維持し再建する道を選び、雇用調整助成金を申請しました。危機的状況において、民間は公に近づきます。そのとき、公の心ある人は、力になってくれます。行政、金融、同友会、企業が一丸となって「一社もつぶすな」と取り組み、様々な人を巻き込みながら、再建をしていきました。


私たち地域中小企業が担う役割

陸前高田は震災で人口が15%減少しましたが、そこから新しい価値を生み出そうとする企業が増えました。求人倍率は2倍に近づき、出生率も1.76になりました。「地方消滅」の危機感が煽られることの多い昨今、地域中小企業の担う役割は大きいです。人口減少を「一人あたりの利用できる地域資源が増える」と捉え、自然増する資源の質を磨くのです。中小企業の役割とは、地域資源の質を高め価値を付加すること、そして、住民と一緒に地域の未来を考えることです。その中で経営者は、社員を私物化してはなりません。大切なのは人間関係であり、一歩引く姿勢を持つことです。
最後に、「一社もつぶすな」は震災前から掲げていたスローガンです。それを果たすため、私たちは互いを訪問して決算書を見せ合い、本当の意味で支え合ってきました。保身の無い言葉は、人を動かします。現状認識が出来なくなったとき、会社はつぶれます。経営者が会社を私物化したとき、会社はつぶれます。一社もつぶさないための活動を、私たちは行っているのです。

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<参加者感想>
 社長であるお父様が倒れたことをきっかけに、在学中のアメリカから帰国し会社へ戻った河野氏。その後は独学で「経営理念」「五カ年計画」を作り、業績を回復させましたが、「オレがオレが」と血気盛んな二十代であったこともあり、社員との距離は開き、不信感を拭えなかったといいます。そんな中で「経営指針を創る会」へ入会。半年の学びの中で、本当の経営理念の大切さに気付き、そこから社員との関係も徐々に改善していきました。また、苦労して気仙支部を立ち上げ、「一社も潰すな」をスローガンに邁進されました。「地域の中小企業が地域で雇用することで、人口減を止めようと考えた」との言葉は、深くとても印象的でした。
 その後、東日本大震災で被災し、会社も流され、社員の半数以上が家を失いました。それでも「この町を無くしてなるものか」と、社員・仲間と共に支援物資を二百か所以上に配り、地域や役人をも巻き込んで再建した、との事です。また500名の雇用を目指し、復興まちづくり会社「なつかしい未来創造㈱」を設立。現在は40社あまりを起業されています。
 「会社経営を良くすることで地域を良くする」河野氏の地域愛に溢れたエネルギッシュなお話に、胸が熱くなる記念講演でした。

荒木 慎吾氏(スマートブルー㈱・静岡支部)


創業70年の老舗企業を引き継ぐ青年社長

宮澤電池産業㈱

代表取締役 宮澤 学氏(静岡支部)

事業内容 非常用電源設備の販売・保守・点検

設立   1979年2月

社員数  正規 14名 

入会   2013年2月

所在地  静岡市葵区竜南1-10-28

藤本浩氏、宮澤学氏

社員が仕事を幅広く担当、レスポンスの良さが強み

宮澤電池産業㈱は、今年で創業70年になる老舗の電気機器販売・メンテナンス会社です。非常用電源設備の販売・保守に特化し、役所やショッピングセンター等の大型施設が主要顧客です。創業当時は、宮澤氏の祖父が沼津で船舶用の電源の販売・メンテナンスを行っていました。やがて商売は大きくなり、宮澤氏の父の代になって静岡市にも拠点を置くようになり、現在に至ります。14名いる社員のほとんどが営業と技術・サービスを兼務でき、そのレスポンスの良さが、多くの顧客から評価されています。

順調に事業を引き継いできた三代目社長

宮澤氏はメーカーで社員として勉強を重ねた後、宮澤電池産業㈱に入社。その頃は、静岡に拠点を移し事業を大きくしてきた2代目社長に、社員はものを言いにくい雰囲気がありました。そこで宮澤氏は、社長と社員のパイプ役を果たします。そして平成24年5月、社長に就任。今も変わらず、良いことも悪いことも社員とはコミュニケーションがとれているようです。会社の今後の課題は、年輩の技術者達と若い技術者達の引き継ぎ、増えてきた仕事への対応を挙げていました。将来は、仕事の量は増やさず利益を増やし、従業員が休める会社にしていきたい、とのことです。

同友会活動でも支部委員会で新たな試みを

宮澤氏は、静岡支部オリエンテーション委員長を務めています。新入会員のフォローがメインの委員会ですが、支部では新しい試みとなるため、委員会のあり方を探るところから始めています。新入会員が積極的に会活動に参加できるように、居場所を作るのが大切、とのこと。宮澤氏も新入会員だった頃、ふと目に留まったワインの会に参加してみたのが、同友会に出席するきっかけでした。例会でも懇親会でも、なんでも良いから新入会員の居場所を作るためにフォローしていきたい、と語っていました。

 

取材・記事:藤本 浩氏(プリントバリュー㈱・静岡支部)