【写真】㈲アグリ開発 新社屋

会員企業名 ㈲アグリ開発 設立 1999年9月
会員名 宮園 義実 業種 農業資材販売卸売業
所属支部 榛原支部 従業員数 社員8名 パート2名
会暦 2004年5月入会 事業内容 農業用散水設備、屋外緑化資材

 

― ひとつのご縁から始まった ―
農業への「エクセルギー技術」応用の取り組み

 代表取締役の宮園義実氏は、創業前は農業機械メーカーに勤めていました。そして、1999年に独立し、㈲アグリ開発を設立します。以来17年間、農業資材サプライヤーとして事業を展開してきました。独立当初は、前職で培った知識以外にも土や作物のことなど農業では幅広い知識が求められるのだと痛感したそうです。そのような中で、前職の頃にお付き合いのあった方をはじめとして様々な方に支えられ育てられてきたことから、宮園氏は「ご縁を大事にする」ということを非常に大切にしています。
 さて、同社は社業で培った農業省力化技術に磨きをかけ、新分野の革新的な農業技術を開発すべく研究開発実験ルームを備えた本社新社屋を、2017年1月5日にオープンしました。
この新社屋は農業分野での活用は全国で初めてとなる「エクセルギー技術」の体感ルームや、大規模農業に対応した農業自動化・省力化の技術を実際に見ることの出来るショールームなど「未来農業に役立つ情報発信拠点」として機能を備えています。エクセルギー技術とは簡単に言うと、「使えるエネルギーを余すことなく利用する技術」です。例えば、太陽光のエネルギーから生み出した熱や電気などを無駄なく効率的・効果的に利用できるようにするのもエクセルギー技術のひとつです。
 宮園氏がエクセルギー技術を農業に取り入れようと考えるようになったのは、東京の建築家(一級建築士)、黒岩哲彦氏との出会いがきっかけでした。そして現在、これまでは無駄になっていたエネルギーを最大限に利用し農業に活かすための事業・研究を始めています。

「未来農業に役立つ情報発信拠点」様々な先進的機能を持つ新社屋
 この新社屋は「農業に革命を起こす!」と本気で取り組む宮園氏の想いが随所に感じられるものとなっています。まず、1階では、農業資材通販の全国出荷に対応したラック式収納や組立加工部門、トラクターや大型機械の保管に便利な低コスト農業用テント倉庫の実物を展示しています。
 続いて2階のメインは、エクセルギー技術を取り入れた農業の実験・体験ルームです。例えば従来の営農方法では、冬に作物を育成する場合、重油を大量に消費して熱を生み出し、ビニールハウス内部の全体を暖めて管理しています。しかし、もしかしたら植物の根の周辺を暖かく保てれば、消費するエネルギーを抑えて十分育成できるのかもしれません。このような仮説の下、実験的にイチゴの根の周辺を暖かく保ち、実験栽培しています。
 その他、大規模農業に対応した農業省力化・自動化のための様々なシステムのショールームや、作物の営農技術に関する情報を集約・蓄積するためのコンピューターサーバーを設置、これらの情報の提供や営農の提案をする営業本部としての機能も併設しています。
そして3階には、農業技術セミナーなど研究・情報発信に活用できるセミナールームを完備しています。
 このように新社屋全体で、全国の顧客や農業界全体のニーズに応えるための様々な新しい技術やシステム、開発、情報発信などに取り組んでいます。宮園氏は「特に近年、耕作放棄地が増加傾向にあり、その原因のひとつが後継者不足。本気でこれから農業を継いでいく方達に、情報を提供していきたい」と語ります。

エクセルギー技術体感ルーム

低コスト農業用テント倉庫

ロゴ、キャッチフレーズにこめられた思い
 新社屋のオープンに伴い、店舗ロゴも一新しました。同社は灌漑技術を原点に事業を発展させてきたので、水のしずくをモチーフとして取り入れています。しかしながら、そのしずくの色は、自然の緑と土の茶色。さらに、中のクロスで田んぼや山を、先端の尖がった部分で農業技術の最先端を目指す方向性を表現しています。「AGRI」という文字の部分では「AGR」が繋がっていますが、これは「ご縁(繋がり)を大事にする」ということ、そして「I」が独立しているのは「自立」を表しているのだそうです。このようにこの新しいロゴには「この仕事に関わる全ての人が幸せになれるように!」という思いが込められているのです。
 宮園氏は最後に、同社のキャッチフレーズである「“農”ともにこの先へ!」について話してくれました。
「このキャッチフレーズにある「ともに」には、色々な意味を込めています。お客様、農家とともに、取引先とともに、仲間・スタッフとともに、地域とともに。様々な方達とともに力を合わせて農業の課題を解決し、次世代の農業を創造していきたい。さらには、農から発信した技術を緑化や環境分野など他の分野にも幅広く応用し、役立てていきたいと考えています」とのこと。
 宮園氏の強い思いと新しい農業の未来が詰まった新社屋が、日本の未来の農業を支える源泉となるのだと強く感じました。

新しい店舗ロゴ

左から藤原氏、宮園氏、戸塚氏、河内氏

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取材・記事:河内崇文氏(㈱スマートブレイン・榛原支部)
          取材:藤原博美氏(㈱日本ベルト工業・沼津支部)
          取材:戸塚秀昭氏(㈲まるととづか・榛原支部)


古き良き技術を通して満足のいく住み心地へ

㈲渋谷木工所

専務取締役 下田 啓澄氏(御殿場支部)

事業内容 木製建具・アルミサッシ、リフォーム工事、オーダーメイドの建具(ドア・襖・障子)、オーダー家具製作

創業     1918年

設立     1976年12月

社員数    17名

入会     2015年4月

所在地    御殿場本店 御殿場市古沢175
         小山店   駿東郡小山町菅沼653-2

URL     https://www.shibuya-mokko.com/

下田 啓澄氏(左から3番目)


地域の老舗として

1918年(大正7年)に創業し2018年(平成30年)には100年を迎える老舗の渋谷木工所では、襖、障子、ドアなどの木製建具作りに特化し、地域の建設会社や工務店からの新築住宅の和室など、木を使用した建具の施工を請負っています。しかし昨今、住宅環境も変化し和室を設けた間取りが少なくなりつつあり、職人が減少。その影響で事業を継承される会社も減少傾向とのことです。その中で渋谷木工所は、信頼と高い技術力で地域に根付いています。木製の建具は、質感や肌触りといい、味と深みがあります。施工の際には日常の住み心地の満足度も高めるために、細部にまで拘っています。


歴史を感じながら次世代へ革新

リフォーム工事では、建具に手を加える際、襖紙などを剥がすと「渋谷木工所」と書かれていることもあり、先代の足跡を感じるそうです。下田氏は、素材を変えずに磨き深めることで、会社の歴史の継続とお客様との絶えることのないお付き合い、そして更なる発展に繋がると話します。特異な技術も要求されるため渋谷木工所でしかできない施工を求めて遠くは長崎、四国などからも問い合わせがあります。家具などもリノベーションができにくいと思われがちですが、細かなパーツを交換し磨きなおせば新品同様になると話します。


見据える先は会社と自分の成長

事業継承に向けて
現在は3代目の渋谷一氏が2003年に2代目から代表権を引継いでいます。いずれは、専務取締役の下田氏
への事業継承を考えており、次代の経営基盤を準備するうえで下田氏が2015年に入会しました。現在は経営
理念部会で理念作成のため学び、来年の2月には例会で発表予定とのことです。その理念が基軸となり次の
ステージに向けての飛躍が期待されます。4代目の事業継承に向けて着々と歩み続けています。

 

取材・記事:片野 貴一郎氏(㈱モスク・クリエイション・御殿場支部)
取材:遠藤 直樹氏(㈱マルエ・御殿場支部)
鎌野 芳行氏(㈲鎌野電機・御殿場支部)
杉山 道洋氏(㈲杉山養鶏場・御殿場支部)


アットホームな社風と幅広い技術で躍進中!

モチヅキオートボディー

代表 望月 渡氏(静岡支部)

事業内容 自動車鈑金・塗装、車検・整備・修理、新・中古車販売、自動車保険

創業     1988年4月

社員数    正規5名 パート3名

入会     2014年6月

所在地     静岡市清水区尾羽133-2

URL     http://www.mochizuki-auto.com/

藤本浩氏、望月渡氏


好きな自動車に関わることを仕事に

モチヅキオートボディーは、清水区庵原で板金・塗装をメインに、車検、新車・中古車販売から自動車保険まで、車に関わる様々なことを請け負っています。望月渡氏は、創業者である父と同じ仕事がしたい、と大手自動車メーカーの専門学校へ進学し、整備士の免許を取ると、卒業後はディーラーの整備工場に就職。10年を経て家業に入り、両親と3人で再スタート。整備の他に営業や資金面のことも引き受け、2015年1月に同社の代表者となります。その間仕事も順調に増え、正規社員5名、パート3名の規模まで成長しました。氏は「好きなことを仕事にできているので楽しく、本当に良かった」と振り返ります。


風通しが良く雰囲気の良い職場が自慢

望月氏に自社の良い点を聞くと、社内の雰囲気を挙げてくれました。仕事後に飲みに行ったり、同友会のイベントに一緒に参加したりと、従業員との関係の良さが、社内の良い雰囲気にも繋がっている、とのこと。また、女性従業員の存在も大きいそうです。一般的に自動車整備の仕事は男性のイメージですが、同社にはツナギを着て働く女性従業員が2名もいます。一般のお客様から「工場に女性がいると仕事も頼みやすい」と言ってもらったこともあるそうです。今後は、女性従業員も増えたことから、更衣室の設置やトイレの増設など、従業員のための設備投資も計画しています。


同友会で学んで更に良い会社へ

入会当初は知り合いもなく、勉強する内容も難しく、場違いな感じを受けていたそうです。しかし、会の活動に参加する中で知り合いも増え、今では支部役員の一員として活躍しています。「商売は儲かれば良いという位にしか考えていなかったが、同友会で学ぶ中で、社員のために何ができるかということも考えるようになった。今後は、仕事も増えているので、まず社員を増やしたい。そして、改築予定の工場に会議室を設け、社員と共に仕事について考える場を作りたい」と語ってくれました。

 

取材・記事:藤本 浩氏(プリントバリュー㈱・静岡支部)

藤枝市エコノミックガーデニングから中小企業振興基本条例制定へ

2016年12月19日(月)、藤枝市議会定例会で「藤枝市地域経済を支える『がんばる中小企業』振興基本条例」が可決されました。県同友会では2008年に中小企業憲章推進本部を組織し、憲章草案や他県の条例推進事例の学習を進めてきました。2010年6月には中小企業憲章が閣議決定され、それ以降、各支部で憲章・条例に関する学習会を展開、現在は静岡県をはじめ、富士市、富士宮市、磐田市、三島市、そして藤枝市の5市で条例が制定されました。藤枝市での条例制定に至るまで同友会志太支部では、早期からエコノミックガーデニング(EG)事業を提唱する藤枝市の取組みに注目し、学習と連携を強化させてきました。

全国に先駆け、地元中小企業の成長を図る環境づくりを支援する「EG」に取り組んできた藤枝市。志太地域(藤枝・焼津・島田)の三市に跨る志太支部は、2011年9月例会でEG研究の第一人者、拓殖大学政経学部の山本尚史教授を招き、企業育成と繁栄のビジネス環境づくりや行政と企業の望ましい関係づくりの必要性などを学びました。例会には藤枝・焼津の副市長と産業振興担当、会員約40名が集まりました。同年10月には静岡同友会全県経営フォーラムを藤枝市で設営、続く11月には藤枝市産業振興部産業政策課と意見交換会を開催、EGをはじめ市の融資制度や地元企業の育成支援策について意見交換を行いました。2012年9月には「地域活性化のプラットホームとしてのEG」をテーマにパネル討論会を開催。EGの概念のもと、挑戦意欲の高い企業家を増やし、産業界と行政が一体・連携して、環境整備に取組むことが重要という考えが会の中でも浸透してきました。2014年には各社の経営資源を掘り起こし、会員間で企業連携の挑戦事例も生まれました。訪問・店舗マッサージ業(藤枝市)の会員が、予防医学の視点に立ち、スポーツショップ(藤枝市・会員)、総合物流業(藤枝市・会員)と新たな連携事業を実施。BtoC取引だけでなく、BtoBによる新分野・新サービス開拓にも広がりを見せ、その挑戦と実績に会内外から注目と期待が寄せられました。併せて藤枝市ではEG事業に対する予算も編成され、EG協議会メンバーに支部会員も参画するなど行政からの期待も次第に高まりを見せてきました。2015年には支部設立30周年を迎え、行政、経済団体、金融機関、教育機関、中小企業経営者など約100名に参加頂き、広域連携による地域創生について学びあいました。

そして昨年11月には志太支部と藤枝市産業振興課が意見交換会を開催。EG事業の推進状況や中小企業支援策と併せ、藤枝市地域経済を支える「がんばる中小企業」振興基本条例(案)の概要や意義について理解を深めました。

条例制定は、新たな地域づくりのスタートと言えます。人口流出、少子化、事業承継、人材確保、大規模災害など、多くの課題が集積しています。私たち中小企業家同友会は、地域社会の主体者としての気概を持ち続け、地域経済と雇用を支え、持続的な成長と発展をする地域社会の実現をめざすことを忘れてはなりません。今後も同友会ではよい会社、よい経営者、よい経営環境の3つの目的を総合的に実践していくことをめざし、行政や関係機関との連携を強化させていきます。

2017年1月
文責:静岡県中小企業家同友会
事務局次長 秋山