経営指針を基に社員と向き合うことが、会社の変化に繋がる

遠州工機㈱

取締役副社長 中川 泰典氏(榛原支部)

事業内容:板金(ステンレス・鉄)、製茶コンベア、バケットコンベア、機械製作・組立、高圧洗、自社製品、OEM

設立:1963年6月

社員数:22名

入会:2012年11月

所在地:牧之原市地頭方1179

中川 泰典氏(左)


父の病をきっかけに遠州工機㈱に入社

 大学を卒業後、大手消費者金融会社に勤めていた中川氏。勤めていた会社が外資系の会社に買収されて体制が大きく変わったことと、2010年に社長である父親が病気で倒れてしまったのをきっかけに実家に戻り、遠州工機㈱に入社しました。入社時の会社の状況はリーマンショック後の影響もあり、良い状況ではなかったので、金融系の会社に勤めていた経験を活かし、営業と財務を中心に会社を立て直す役割を担いました。


創る会で経営者の「芯」を学ぶ

 沖本登志春氏(㈲トシズ)の紹介で同友会に入会し、早々に経営指針を創る会(以下、創る会)に参加。しかし創る会では、他所から来た自分が自社について話すことが全て他人事のようだと言われ、社員の理解が得られないのは自分自身が経営者として、遠州工機㈱を継続していく責任に対する自覚が無いことを指摘され続けました。当初は経営方針や数値計画は、業績改善のための資料として金融機関向けに作成していましたが、経営理念を根本とし、会社を存続・発展させるという経営者としての「芯」が自分自身に無かったということです。

    


社員との対話で、経営指針の浸透をはかる

 中川氏は、創る会で得たものは「社員ともっと向き合わなければ会社は変わらないということ」と言います。遠州工機㈱という会社は祖父が創業し、父・叔父と社員皆で創り上げてきた会社で、その歴史や特色が社員一人ひとりに染みついています。中川氏自身がその点を理解した上で、社員に今後の会社の在り方や方向性を伝え、共感してもらわなければ、いくら計画を立てようが新規案件を持ってこようが、会社は良くならない、と考えています。現在、毎朝のあいさつや個人面談を実施することで社員ともっと話すことができるよう心掛けているそうですが、「多少の変化は出てきているものの、まだまだ」とのこと。自分にもっと経営に対する自信や強さが必要だと認識する中、指針書を毎年見直したり、創る会にスタッフとして参加したりして自分を変え、会社の変革に繋げていきたいと考えています。
 自社においては、これまではお茶などの農業用機械が主体だった仕事も、同友会からの繋がりで、様々な製品を作製するような流れになるなど、少しずつ変化が現れてきているそうです。積極的に自己変革のヒントのある場に身を置く中川氏の行動が、会社の変革にも繋がってきているのを感じました。

記事:伊藤 義康氏(イトウシャディ㈱・榛原支部)

【逸品】地域に根付き、お客様と共に信頼できる企業を目指す。

会員企業名 太田印刷㈱ 創立 1912年
会員名 太田 政樹 業種 印刷業
所属支部 中遠支部 従業員数 正規:5名 パート:2名
会暦 2017年3月入会 事業内容 総合印刷、カレンダー、タオル、看板、ホームページ、うちわ、のぼり旗、ステッカー、荷札、ゴム印


創業107年の老舗

 太田政樹氏(太田印刷㈱)は、地元磐田市にて1912年(明治45年)に創業、107年の歴史ある老舗印刷会社の4代目経営者になります。同社は地域密着企業で、付近の工場関係を顧客として持ち、県西部でも2社しかないカレンダー問屋として歩んできました。しかし時代の移り変わりを踏まえ、現在では1軒のお客様から幅広くお世話させて頂くことに取り組んでいます。「自社の売りは、大手とは違い小回りが利き、社員と共に常に即日対応を心掛けている。それが信用に繋がっている」と太田氏は話してくれました。


商品に付加価値をつける

 印刷業界は今後も厳しい状況は変わらないと予想され、将来に一抹の不安は感じているといいます。しかし、時代の流れと同様に価格競争の中で値下げしていくのではなく、本当に良い物をお客様に提案・提供するべく、お客様と正面から話し、その会社を理解したうえでのご提案や物づくりをすることにより自社商品に付加価値をつけています。まさに太田印刷㈱の経営理念「私達は、お客様と一緒に物づくりをし、信頼できる企業を目指します。」や三感確立(情熱感・安心感・満足感)にも繋がっていると感じました。理念は社員と共に毎朝朝礼にて唱和し、浸透を図っています。現在の社員は先代からの引き続きの方や新任の方もいますが、お互いの信頼関係の中、円滑な人間関係を築くことができているということでした。

太田 政樹氏(左)


地域密着でお客様によりよい物を

 代表取締役に就任以来、太田氏は売上重視で経営をしてきました。しかし、4年ほど前からNPOの友人から頼まれ、1日体験学習として小学生の受け入れをするようになりました。その中で子供たちに将来の夢を持つ大切さを語り、いずれは地元へ帰って地域を良くしようという活動もしています。「今までは、上昇志向で成り上がりの社長が理想像だった。しかし、それはそれで大事なことではあるが、これまで太田印刷㈱が地域密着で経営してきたこと、社員の大切さ、地元の子供たちとの交流などを振り返り、自社を通して、協力業社と連携をとりお客様に、より良い物の提供できる会社にしていきたい」と厳しい外部環境の中でも、未来を見据えていました。

取材・記事:藤井 陽介氏(㈲藤井建築・中遠支部)