大正8年より続く「ぐり茶」の元祖 (株)市川製茶工場 市川 正樹氏 伊東支部

カテゴリー:私の逸品

【表紙写真】(株)市川製茶工場 代表取締役 市川 正樹氏

会員企業名 (株)市川製茶工場 創業/設立 1919年(大正8年)/1972(昭和47年)1月
会員名 市川 正樹 業種 食料品製造業
所属支部 伊東支部 社員数 正規31名、パート10名
会暦 2005年12月入会 事業内容 茶製造(伊豆の名産ぐり茶、各種煎茶、茶器、茶関連商品)

 

◆市川製茶工場と「ぐり茶」

今回の「私の逸品」は、平成25年12月に世界農業遺産「静岡の茶草場(ちゃぐさば)農法」に認定された茶葉100%で作った、限定 市川のぐり茶です。ぐり茶は、正式名称を「玉緑茶」と言います。明治時代末期に九州で輸出向けに作られたのが始まりで、今では静岡県東部の伊豆のお土産として定着しています。煎茶とは異なり、最後の葉の形を整える精揉工程が省略され、匂玉のような形に揉み上げるのですが、そのグリグリした外観から「ぐり茶」と呼ばれています。
市川製茶工場㈱は、大正8年にぐり茶の製造を始めている老舗です。摘みたての生葉の柔らかさを生かし、先代直伝による完全な火入れ法で製造した、ほっくりした親しみやすい味わいがこのお茶の特徴です。
そして今回の逸品は、世界農業遺産「静岡の茶草場農法」に認定された茶葉100%のぐり茶なのです。

世界農業遺産とは正式名称を「世界重要農業遺産システム(GIAHS)」といい、グローバル化、環境悪化、人口増加の影響により衰退の途にある伝統的農業や文化、土地景観の保全化と持続的な利用を図ることを目的に2002年(平成14年)に創設されたプログラムです。
食料の安定確保を目指す国際組織である国際連合食糧農業機関(FAO)が世界的に重要な農業や土地利用のみならず、生態系や土地景観、習慣、伝統文化など農業に関連する文化的な要素も含め次世代に継承することを目的としています。
2013年5月末時点における「世界農業遺産」の認定数は11ヶ国25箇所あります。日本では新潟県の佐渡地方、石川県の能登地域、熊本県の阿蘇地域、大分県の国東半島宇佐地域、静岡県では推進協議会構成市町である、川根本町、島田市、掛川市、牧之原市、菊川市の地域が認定されています。
茶園面積は約10,000ヘクタールで、世界農業遺産である茶草場農法茶園面積は約300ヘクタールあります。

茶草場農法とは、この世界農業遺産の見地から環境と共生する伝統農業と生物多様性が同じ方向を向いて両立していることが世界に評価され、世界農業遺産の1つの伝統農法として認定されました。この「茶草場」とは、茶園に有機物として投入するササやススキなどの草を刈り取るための、半自然草地のことです。

茶園への草の積極的な利用のために、茶園周辺には茶草場が点在しています。静岡では当たり前の風景ですが、他ではほとんど見られない、静岡県の特徴的な風景です。そこには希少種を含む多くの草地性の植物を身近に見ることが出来ます。

茶草場から刈り取ったススキなどの草を茶園に敷く伝統的な茶草場農法の技術は、より高品質なお茶を生産しようとする農家の方々の努力により、今日まで継承されています。良質なお茶を精算する営みが、結果的に生き物を守り、茶畑周辺地域の生態系を守ることにもなっているのです。

◆環境に配慮した店舗づくり

市川氏は同友会活動の中で、特に支部長として理事会などの県の行事や支部例会に参加するようになった事で、自分の会社に対する想いが、地域の為、人の為になるような会社をつくる、という想いに変わり、日本茶を通じて何ができるのかを考えるようになった、と語ります。
その考えを具体的に形にしたのが、2013年4月にオープンした新店舗です。1階はバリアフリーにし、車いすの方も店内を自由に見て頂け、専用のお手洗いも備えました。また、2階ではお茶処「茶彩(さや)」を併設し、和風で落ち着ける空間を演出し、ランチなども楽しんで頂けるようにしました。さらにこの新店舗は環境にも配慮し、社内照明のほぼ全てをLED化。本社・吉田店・湯の花店には全て太陽光発電パネルを設備する等、環境にやさしい店舗づくりをしています。

◆ぐり茶・日本茶を世界に発信

市川氏は自社を、日本が生み出した文化の一つである緑茶文化を、自然環境を大切にしつつ、国内はもちろん、台湾・イスラム圏・タイ王国に拡げる拠点と位置付け、2020年を目標に、伊豆ブランドである「ぐり茶」を静岡ブランドとして磨き上げていく、と決意しています。その準備として、ハラル認証(イスラム教に定められた戒律に従って食材が作られ調理・運搬されていることを証明するもの)の取得や、タイ王国の人脈づくり、台湾の販路の拡大などに力を入れています。
 東京オリンピックが開催される2020年に「市川のぐり茶」とそのストーリー、自然環境への想いが世界に発信されるのが、今から楽しみです。