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変えないことが新しい!?“日本の伝統を守り抜く”思いから、新たなるチャレンジへ 天野醤油(株) 天野栄太郎氏 御殿場支部

カテゴリー:御殿場支部, 新着情報, 私の逸品|最終更新:2014年07月10日

【表紙写真】天野醤油 天野栄太郎代表取締役

会員企業名 (株)天野醤油 設立 1930年(昭和10年)
会員名 天野 栄太郎 業種 製造業
所属支部 御殿場支部 社員数 社員 5名・パート 4名
会暦 2006年10月入会 事業内容 再仕込醤油・国産丸大豆醤油の天然醸造 国産丸大豆本仕込味噌 醸造元

天野醤油株式会社 天野栄太郎氏

今月は御殿場支部の「天野醤油株式会社」を尋ねました。まもなく創業80年を迎える、地元ではだれもが知っている老舗醤油メーカーです。大手・中堅メーカーの量産醤油が全国シェアの7割を占める厳しいマーケットの中で、原料と製法にこだわり、ついには日本一の醤油に登り詰めたまさに“逸品”の醤油を作り続ける、こだわりの中身をご紹介します。

1.天野醤油ができるまで

工場の様子

今回、広報委員会で取材をさせて頂いた時はちょうど月に一度、2週間ほどかけて行われるしょうゆ麹の仕込み時期でした。原料は国内産丸大豆、国産小麦、国産塩、水の4種類。蒸した大豆と炒って砕いた小麦に種麹を混ぜ、数日間寝かせてしょうゆ麹を作る作業が行われていました。この麹作りで醤油の味が決まってしまうとの事で、特に心がけているのは人の手を使い、丁寧に作業する事だそうです。温度や湿度管理はもちろん、麹菌を万遍なく行き渡らせるための“天地返し”も、機械化せず人の手によって丁寧に行われていました。この麹づくりへのこだわりが、天野醤油の原点となっています。

製麹室。人の手を加え、こだわりの麹が作られます

製麹室では、温度・湿度管理が欠かせません

十分に発酵が進んだ醤油麹はホースで発酵樽へ圧送され、富士山の湧水で作られた食塩水を混ぜ、濃い口醤油で1年、再仕込み醤油で2年の歳月をかけてゆっくり熟成されます。熟成樽には天野醤油を作り出す天然酵母がたくさん棲みついているとの事。乳酸菌や酵母、麹菌などの働きによって天野醤油の味が作られていきます。酵母の働きを活発にするために温度を上げたり、発酵を促進させる技術は存在しますが、天野醤油では天然醸造にこだわり、四季によって変化する温度や湿度を見極めながらの「職人技」によって作られています。

成熟樽の様子。天野醤油を作る天然酵母の棲み家です

発酵中の麹からは息遣いが聞こえました

熟成が終わったもろみは風呂敷のような大きな布に包まれ、積上げられて搾りの工程に入ります。最初はもろみ自身の重みでゆっくり絞られ、2日目からはプレス機を使って搾りますが、ここでももろみに負担を掛けないように時間をかけて絞ることで、丸みのある、おいしい醤油に仕上がるとの事でした。最後に火入れをして殺菌、発酵を止め、ろ過・瓶詰することで100%天然醸造の天野醤油が完成します。

もろみは木枠の中で積み上げられ、ゆっくり搾られます

最後は優しくプレス機で搾り。おいしい生揚げ醤油が滴っています

2.自社ブランドへのこだわり

天野醤油は先々代の天野福太郎氏によって設立され、富士山の湧水と国内産原料を使った醤油造りにこだわり続けています。父の代には醤油業組合に合理化の波が押し寄せ、共同出資組合に加入することで共同製造を行うよう誘いがあったものの、無添加・天然醸造醤油製造へのこだわりから頑なに委託製造を断り、自社製造の道を選ぶことになりました。現在、静岡県内33社ある醤油メーカーのうち、29社のメーカーが同じ工場で作られた醤油を販売し、県内92%の製造シェアを持っています。自社製造をしているのは天野醤油を含めてたったの4社。そのうち半分にあたる県内製造シェア4%(年間30万リットル)が天野醤油で製造されています。
「良い原料・良い環境で、おいしい醤油を作りたい」「自分で作ったものを自分で売りたい」という思いが息づき、現在の「天野醤油ブランド」が確立されています。

炒った小麦

3.日本一の再仕込み醤油

このような厳しい醤油シェアの中でも天野醤油が生き残ることが出来るのは、品質が驚くほど高いからです。「日本一の醤油を作りたい」という思いから、再仕込み醤油の製造を決意されました。
再仕込み醤油とは大豆・小麦で造ったしょうゆ麹に、塩水の代わりに1年かけて熟成させた生揚げ醤油を加えてもろみを作り、さらに1年間熟成させた醤油の事です。つまり完成まで2年の歳月を要する、非常に手間、時間、コストがかかる醤油なのです。
この再仕込み醤油に取り組み、平成10年には全国醤油品評会、再仕込み醤油部門にて「食糧庁長官賞」(全国2位)を受賞。そしてついに平成12年、同品評会にて「農林水産大臣賞」(全国1位)を受賞、さらには平成14年、「農林水産省綜合食料局長賞」も受賞されています。

平成10年、食糧庁長官賞 受賞

平成12年には農林水産大臣賞 受賞

このような数々の上位賞を受賞されるという輝かしい経歴を持った天野醤油の再仕込み醤油は現在、JAS(日本農林規格)の再仕込み醤油における特級規格の基準となっています。醤油造りに対するまっすぐな思いと情熱によって、時には大手醤油メーカーの方が工場の視察に来たり、県東部の学校給食に採用されて多くの子供たちにおいしい醤油を提供するなど、安心と信頼、実績を兼ね備えたこだわりのブランドになりました。

4.食育活動

このような輝かしい実績を淡々と、そしてにこやかにお話しされる天野栄太郎氏。しかしインタビューを進めていく内に、醤油業界に対する不安を口にされました。
昔は家庭料理で煮物や麺つゆを作ったり、お中元・お歳暮といった贈答品として醤油を送ったりと、醤油を使う機会が多かったのですが、近年では日本人の食文化の変化や生活スタイルの変化のために醤油離れが進んでいるそうです。それに輪をかけて長引く不況の中、外食産業が減少し大口顧客も減っているとの事。このような中、「日本の伝統調味料である醤油の素晴らしさ」を伝えていくため、天野氏自身も積極的に小・中学生に対する「食育活動」を行っています。

その思いの根幹にあるのは「恩返し」。県東部では広く学校給食の調味料に天野醤油が使用され、おいしい給食が作られています。その御恩に対して「食育」と言う形で応えたいとの事でした。平成22年には日本醤油協会認定の「しょうゆもの知り博士」を取得。全国に200名、県内には5名しかいない博士号だそうです。毎日使っている調味料でありながら、作り方、原材料、醤油の種類、色、保存方法など、醤油について案外知られていないことが多く、子供たちも毎日給食で口にしている天野醤油なので関心を示してくれると、楽しそうにお話しされていました。

5.これからの目標

食育活動を行う傍ら、次の時代に生き残るためのビジョンもお話しされました。どんなに醤油の素晴らしさを伝えても、日本人の食文化が変わっていくのは止められません。醤油の代わりとして、既成のめんつゆやドレッシングがシェアを伸ばしているそうです。また、プロの料理人からも「天野醤油ブランドのたれやドレッシングを作ってほしい」と要望が上がっているとの事。天野醤油への評価の現れと見ることもできるのでうれしい声ではありますが、一方で醤油職人としては添加物による味の変化や日持ちの関係、醤油に対するこだわりから加工品はなかなか作りたがらないのが現状の様です。
日本の伝統産業である醤油づくり。この伝統はしっかり変えずに守り抜きたい。この醤油を会社の柱としつつ、お客様のご要望にお応えするために欲をかかずに商品の幅についても取り組んでいきたいとの事でした。

 

取材終わりに、にこにこしながら濃い口と、再仕込みの醤油小瓶セットをお土産に持たせてくれた天野氏。「醤油の素晴らしさ」を語るには「本物であること」が大前提。味も香りも、本物の醤油は全く違うことを実感しました。しっかりこの伝統を守って頂きながら、近い日に美味しい新商品が発売されることを心待ちにする取材班でした。

取材・文:大川 隆久 フヱタ工業㈲
写真:片野 貴一郎 ㈱モスク・クリエイション
取材:遠藤 直樹 ㈱マルエ
取材:杉山 正英 ㈲杉山正五商店

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