【私の逸品】自社生産の食材で食育と職育を~食材は、僕らが育てた想いのカタチ~ (株)つぼぐちフードサービス 坪口 榮二氏 御殿場支部

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【写真】(株)つぼぐちフードサービス 坪口 榮二氏

【逸品】つぼぐちファームの収穫写真

会員企業名 (株)つぼぐちフードサービス 創業/設立 1955年3月/1963年7月
会員名 坪口 榮二 業種 サービス業
所属支部 御殿場支部 社員数 正規50名、パート・アルバイト250名
会暦 1989年5月入会 事業内容 仕出し、慶弔料理、各種ご宴会、各種ケータリングサービス、外食事業

 

㈱つぼぐちフードサービス 坪口榮二氏

 

今月は御殿場市を中心に仕出し料理の製造・販売や日本料理店をはじめとする各種外食事業の経営など、〝食″に関わる事業を展開している「(株)つぼぐちフードサービス」代表取締役、坪口榮二氏を訪ねました。現在、10ヵ所に拠点を構えて幅広く事業展開を行っている同社では、昨年の春から「つぼぐちファーム」と名付けた畑や「つぼぐちの田んぼ」と名付けた水田を立ち上げて運用が始まっています。今回は「つぼぐちファーム」に対する思いについて、坪口社長にお話を伺いました。

 

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仲間に支えられ、仲間と育てた“つぼぐちフードサービス”

坪口氏は1950年生まれ。1955年にお母さまが創業した小さな雑貨屋でお客様に喜んでいただくため煮物を炊き上げ、近隣企業のお弁当作りを始めた事が〝食″に携わる原点となりました。学生時代から煮物を炊く母の背中を見てきた坪口氏も自然に食の道へと進み、少しずつ会社組織を作り上げて現在では10ヵ所の店舗・事業所を構える会社に育ちました。

法人を設立してからこれまでの30年間にはたくさんの節目があったと語る坪口氏。たくさんの事業に取組み、中には撤退した事業もあるそうですが、それぞれの節目には必ず多くの「ご縁」があり、多くの「仲間」に助けられたそうです。従業員の社員共育も同友会や同業の「仲間」からもらった情報を集め、経営者と同じ方向を目指す従業員(仲間)を増やすことで強い会社を作り上げてきました。
数ある節目の中でも坪口氏が特に悩まれたのが、先代から続く給食弁当事業からの撤退だったそうです。お母さまが煮物を炊く背中を見て育った坪口氏にとってはまさに同社のルーツであり、お母さまへの想いが詰まっている給食弁当事業。売上もあり大切にしていた事業でしたが価格競争が激しく、どれだけの満足をお客様に届けられるかに疑問を感じながら続けていました。しかし従業員の方々と相談し、社員みんなで作り上げた経営理念に立ち返って決断した結果、3年前に同事業から撤退して外食事業へと軸足を移す事になります。同社はトップダウン経営ではなく、社員全員の知恵を結集させ利益を生むボトムアップの組織を作り上げておられます。インタビューする中で印象的だった坪口氏の言葉は、「経営理念は社員みんなでどんどん変えて良い」と言うものでした。

 

㈱つぼぐちフードサービスの経営理念

社員みんなで作り上げた新事業

外食事業へと軸足を移した翌年には新しい料理の展開方法で「富士山麓美食絵巻」という経営革新計画の承認を受けます。食材発掘からメニュー開発に至るまで地域のお客様と連携し、さらに食材のすべてを富士山麓の生産者から調達することで生産者、提供者、地域顧客の連携を深めるというビジネスモデルは、まさに会社の枠を超え、お客様と生産者の想いを一つにするものでした。

このビジネスモデルを進める中で立ち上がったのが「つぼぐちファーム」と「つぼぐちの田んぼ」です。御殿場市内の休耕田を活用して社員自らが畑作・稲作を行い、外食事業を展開する同社の店舗で丹精込めて育てた安心・安全な食材を提供するのが狙いでした。また、「つぼぐちファーム」には他にも目的があります。地元農協の職員や耕作地の所有者の方々から指導を受け、新入社員と幹部社員を中心に植え付けから収穫まで1年を通して食材を育てることで、スタッフに食の大切さと食材への感謝の心を育むことができます。社員みんなで力を合わせて食材を育てることで、お客様への想い、食材への想い、会社への想いを育むつぼぐちファームとなりました。

 

取材中の模様

畑が育てる「社員の想い」

つぼぐちファームの運用が始まり1年半が経過した今、どのような成果があったか坪口氏に尋ねてみました。現在、この農業事業で収益は上げていないそうですが、社員の方々が志(こころざし)を持つという意味では狙い通り大変役立っているそうです。

稲作(田植え)に参加するのは主にその春入社したばかりの新入社員と経営幹部の皆さん。新人研修としてみんなで力を合わせて共働作業をする中で、入社直後の新入社員の中に連帯感が生まれ、「食育」と「職育」の両立が図れるとの事でした。

(株)つぼぐちフードサービスは社員共育の仕組みが確立されている企業です。毎年作成される経営指針書も、ポケット冊子に編集されて社員全員が携帯しているそうです。またカスタマーセンターの2階には、勉強会や経営会議が毎週開催される教室が常設されていました。新入社員がこのような「つぼぐちイズム」を学ぶ最初のきっかけとして、つぼぐちファームが役立っています。「みんなで1つの事に取り組むことが大切。新入社員のときに畑で経験したことが、経営指針を共有し、各店舗の店長とスタッフとで意思統一をはかり、100日先の仕事を見据えるのに役立っています」と坪口氏が語っていました。

 

カスタマーセンター内の研修室

 

㈱つぼぐちフードサービス 経営指針書とポケット冊子

夢が広がるつぼぐちファーム

社員共育には欠かせない存在となった「つぼぐちファーム」ですが、ファームに対する坪口氏の想いはまだまだ広がります。同社は外食事業を展開ており、いかに安心・安全な食材を仕入れるかが課題です。経営革新を受けたビジネスモデルにおいても地産地消をうたっており、地域の農作物生産が鍵となっています。

しかし現在、御殿場市の農家世帯数、経営耕地面積ともに年々減少しており、反比例して休耕田が増え続けているのが現状。この状況を打破するため、つぼぐちファームを軸に農業法人としての認証を取得し、休耕田を活かし、農業の活性化を目指すビジネスモデル展開を計画されているそうです。この計画に向けて、農業法人としての認証はすでに取得しているとの事でした。

「みくりやの里」で育てられたおいしい食材を使用し、地域のお客様が考えた料理を、地域の飲食店が提供するという地産地消のビジネスモデルにむけて、夢がふくらむつぼぐちファームなのでした。

 

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取材・記事:大川隆久(フヱタ工業(有))
取材:遠藤直樹((株)マルエ)
取材:勝亦英樹(勝亦製材駿河鉄骨(株))
取材:松岡健二 ((株)オサコー計画)