【私の逸品】日本文化の伝承と付加価値創出の両立に挑む かわむら呉服店 河村徳之氏 富士宮支部

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かわむら

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【逸品】オリジナルストール・バッグ

会員企業名 かわむら呉服店 設立 1952年5月
会員名 河村 徳之 業種 小売
所属支部 富士宮支部 社員数4名 2012年4月入会
会暦 事業内容 呉服・着物・和装の企画・製造・小売販売
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日本全国の浅間神社の総本宮、富士山本宮浅間大社。現在の本殿は徳川家康が寄進して建てられたものです。門前町として現在の富士宮の商店街が形成されました。

 

静岡県富士宮市は、富士山本宮浅間大社の門前町として栄え、全盛期は芸者さんも多く、必然的に呉服店も多くありました。しかし、時代とともにそうした芸者文化も変容し、明治維新以降の欧米文化の大幅な流入もあり、呉服の市場はどんどん狭くなっていく状況に置かれています。

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色とりどりの反物。美しいですね。

富士宮の地で呉服・着物の仕立て・販売業を営む河村徳之さん・千文さん夫妻は、今年、2015年から男性向けの小物・かわむら呉服店オリジナルのストール・バッグを本格的に商品化しました。

実は、これらのオリジナルストールやバッグが生まれたきっかけは同友会でした。3年ほど前に、富士宮支部の、和に造詣の深い仲間からの注文でオリジナル作務衣を制作しました。男性の着物は生地が余りやすいという事情もあり、この端切れ生地を活用して千文さんがバッグを作ったところ大変喜ばれたそうです。男性の着物ともなると、パターンが少なく個性を出すには小物が大事になって来るため、なおのことだったようです。

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着物と合わせたバッグ、ストールと合わせたバッグ、等など、アイディア次第で個性PRの可能性は無限大。

これを機に2014年は様々なバッグをコツコツ自作を始め、今年正式に商品化しました。非常に好評を得て、あっという間に在庫が尽きてしまったので、常にバージョンアップしながら、せっせと制作を続けています。

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様々な和装小物や反物。

着物は日本の大切な文化。特に、浅間大社を中心に栄えた富士宮の和の文化は独特で、美だけではなく、他にはない「粋」な部分、「遊び心」があると言います。

多くの人に呉服・着物に関心を持ってもらえたら嬉しい。伝統文化を大切にしつつも、頑なに守るだけではなく、時代にあわせながら、そして文字通り「遊び心」を取り入れながら付加価値、すなわちお客様の笑顔を創造し、未来に繋げていきたい。

そう語る河村氏は、近年では、富士宮まつりの地区仲間が揃いで着るための着物用に、やはり同じ同友会の仲間の設計士・デザイナーさんとコラボレーションしてオリジナルの生地を作成し、地域の方々に好評を頂いています。

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富士山本宮浅間大社の祭神、コノハナサクヤヒメにちなんだ地区名「木乃花」と文様をあしらった生地。

オリジナルのストールやバッグ、揃いの生地。

自分を高める逸品、仲間との絆を強める逸品がそこにはありました。

文化の変化や衰退を嘆くのでもなく、商品そのものを売ることでもなく、高い安いを問うものでもない。伝統文化に裏打ちされた、でも、時に遊び心もまじえた粋な日本の文化を身にまとうことで、自信であったり、笑顔であったり、心の豊かさなど、そういったものが生まれていってほしい、そんなメッセージを河村さんご夫妻から受け取りました。

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笑顔が素敵な河村さんご夫妻。

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おまけ(笑)

取材のついでに、河村さんのお母様が考案・リクエストしたという、陣羽織をシンプルにアレンジした、普段使いで行けそうな上着を試着する取材者。和っぽい制服もあっても面白いなあ、なんて思いました。世界に誇る日本文化。長い日本の歴史の中で、時代・時期によって様々な様式はあれど、一貫しているのは、どれも、背筋がすっとまっすぐ伸びるような、様式美みたいなものがありますね。素敵な日本文化、そして新しい価値の創造。今回の取材の中で様々な発見をすることができました。ありがとうございました。

取材・記事:田邉元裕(有限会社カボスメディアワークス・富士宮支部)
取材同行・補佐:稲原研(松屋電気商会・富士宮支部)