報告者は小林 修氏((株)ジープロシューマーズ 代表取締役)。
(株)ジープロシューマーズは1985年創業、ペンション向けソフトウェアの開発・販売を主に行っていました。その後、1991年のバブル崩壊を受け経営状況は悪化。業績を回復させていく中、1999年に遠藤剛史氏の誘いで同友会へ入会。
当初は会の目的が分からず、「異業種交流会だろうか?」という思いでいました。その為、例会にはあまり出席しませんでしたが、グループ会には出席。ところが、翌年に異業種交流委員となり、例会の他、県へも足を運ぶようになりました。


【学ぶ事は真似る事】

会活動の中で耳にした「学ぶ事は真似る事」という言葉は、当初は半信半疑でしたが、会社を良くする為、とりあえず他の会員の真似をする事にしました。すると次第に、その言葉は間違ったものではない、と感じるようになりました。
また、自主的に活動へ参加する事で、自ら課題を提示すればどんどん跳ね返ってくるという事、例えば自社の経営課題に直結するものだけを追ってもプラスになるという事が分かりました。


【活動から学ぶ】

活動から学び自社に取り込んだ事としては、社内報、年に2回の個人面談、3分間スピーチ、全体会議、指針発表会、ウェルカムボードなどがあります。狙い通りにいったものもあれば、そうならなかったものもあります。この事から、真似をしても上手くやらないと思わぬ方向に行ってしまう、という事を学びました。


【人から学ぶ】

また、小澤敏明氏や山本義彦静岡大学名誉教授、全国では赤石義博氏や鋤柄修氏、広浜泰久氏、加藤明彦氏、田山謙堂氏、河野通洋氏など、様々な中小企業経営者と肩を並べて学び、またこれらの人達をはじめとする様々な人から学びました。


【同友会での学び】

何から学んだかを挙げていくと、まず『人を生かす経営』からは、労使見解に出会う事ができました。
また、例会やグループ会では、他の経営者の経営を良く見て、つぶさに、謙虚に学びました。
役員を務めた際は、組織運営のシミュレーションができました。
かつて「かわら版富士」にあった「支部長Now」では、会員として活動の方向性や意味を認識し、支部長として発信する事を学びました。
例会発表者を務めた際は、自社のこれまでの経営や自身の在り方について振り返ると共に、発表する事で皆の意見を聞き、学ぶ事ができました。
全国大会では、全国レベルの中小企業経営者から刺激や学びを得、身を引き締めました。

そして「中同協に耳を傾ける」。中同協から学んだ事が、今の会社が存続している事にも繋がっています。

2008年のリーマン・ショックを受けて業績は大幅に悪化し、2009年は経営を諦めかける程でした。しかし、中同協の「緊急アピール」に書かれている内容に勇気づけられました。加えて、その内容は「今、すべき事」を決定する上で大いに役立ちました。
営業強化、財務対策、補助金の利用、経費削減、運転資金確保等、ありとあらゆる事を行いましたが、振り返ると2009年の「緊急アピール」の内容と一致していました。

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【経営指針書について】

さて、現在同友会富士支部で小林氏は、「もうかる委員会」の委員長として経営指針書づくりを牽引していますが、氏は同友会に入って初めて経営指針書というものを知りました。その後、磯野弘信氏の下で指針書を作成、2005年に社内外に初めて発表しました。
記載事項が細かい、という指摘をよく受けますが、小林氏が目指す指針書は先述の広浜氏や加藤氏達のもの、細かな記載がされ何度も読み返された正に「指針所」であり、決して細かいとは考えていません。

指針書については「経営理念で飯が食えるか?」という意見に対ししばらくモヤモヤしたものを抱えていましたが、2014年の富士・富士宮合同例会で報告された藤岡義己氏の「理念の浸透はできない」「ものには順序があり、社員は会社の理念よりも自身の理念に重きを置く」「まずは社員を幸せにする事」という言葉に、モヤモヤは晴れました。

これからは、理念の共有によって、社員が自主的に行動し自立した企業を目指します。そして、民主的に仕事をこなし、連携し互いにあてにしながら、一人ではできない仕事をします。
このような姿を目指すのですが、そうはいっても理念の浸透、共有の前に、やるべき課題は山積していると感じています。

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【小林氏の考える同友会】

同友会は「異業種交流の会・同友会まつりの会・指針書づくりの会」ではありません。
「良い経営者になる為の会」であり、その為の異業種交流、同友会まつり、指針書である事を忘れてはなりません。


【良い経営者、良い人を目指したい】

小林氏は最後に、自身の姿・目指す所等を表した言葉として、日頃の生き方を「上善如水(最高の善は水のようなものである。水は万物を助け、育てて自己を主張せず、だれもが嫌うような低い方へと流れて、そこにおさまる)」、周辺に対する見方を「諸行無常(この世の現実存在はすべて、すがたも本質も常に流動変化するものであり、一瞬といえども存在は同一性を保持することができない)」、心の目指す所を「人牛俱忘(牛(追い求めるもの)も人(追い求める主体=自分)も無く、みな空であることを悟る)」、そしていずれ「涅槃寂静(煩悩の炎の吹き消された悟りの世界(涅槃)は、静やかな安らぎの境地(寂静)である)」と挙げました。

また、経営者として「七息思案」、つまり「一つから七つまで息を吸って吐く間に決断せよ」と言う言葉を挙げました。経営者は判断する立場であり、いつ如何なる時でも七息思案できるようになりたい。また、いつでも即断できるよう、いざという時にバタバタしないよう常日頃から熟慮するよう心がけ、同友会理念を拠り所にやっていきたい、と報告しました。

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グループ討論で語り合う

グループ討論で語る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今夏8~9月、大学生を会員企業に迎え実施した同友会のインターンシップ事業。その成果報告会を11月12日(水)、静岡市産学交流センターで開催しました。当日は体験学生2名の大学生をはじめ、会員企業、大学、行政、関係機関から約20名が参加しました。受入企業の成果報告では、㈱オートベルの友田氏と、㈱アイ・クリエイティブの鈴木氏・宮下氏が、受入の目的、その目的達成のための取組み、成果、今後の目標と課題を発表しました。その後、体験学生の成果報告で、静岡大学と静岡英和学院大学の学生が、インターンシップへの参加動機、目的、成果を、自己成長の観点を入れながら語りました。また産業界に期待することを本音で話してくれたことが当会にとっても貴重なことでした。両者の報告後、参加者はグループに分かれて討論を行いました。学生・企業が相互に目的を共有すること、自社事業の幅が広がる機会になったこと等の成果事例が聞かれました。また、成果だけでなく、学生へインターンシップ受入企業情報の伝達課題とその改善、またインターンシップコーディネート等の専門人材の育成等、産学官が今後も連携して取り組んでいくことが求められるという意見も挙がりました。

【表紙写真】EN’S Group 代表 遠藤 崇浩氏

会員企業名 EN’S Group 設立 2005年4月
会員名 遠藤 崇浩 業種 サービス業
所属支部 富士宮支部 社員数 役員1名 正規4名、パートアルバイト16名
会暦 2011年2月入会 事業内容 飲食業

 

◆美味しい牡蠣を安心して食べられるようにしたい。

「ラウンジバーエンズ」と「フジヤマタパス」の2店舗の飲食店を経営している、EN’S Group(エンズグループ)代表の遠藤崇浩さんが、新たな自社のイノベーションとして目をつけた食材は、“あたる”と言われる「牡蠣」でした。

◆「バカヤロー」から「ありがとう」 に

遠藤さんが10代の頃は、いわゆる「悪ガキ」で、将来何をしたいかもわからず場当たり的な日々だったといいます。そんな中でたまたま先輩の誘いで飲食店を手伝った時、お客様に「美味しかったよ」と、感謝の言葉をもらう事ができました。

「今までは『バカヤロー』とか『この野郎!』くらいしか言われなかった自分が「ありがとう」と言われた!!すごい嬉しい!!!」

この感動体験が、その後の人生を大きく変える事になったのです。

やがて、昼は割烹料理店、夜はスタンダードバーで修行を重ね、最初の店舗「エンズバー」を富士宮市内でオープンさせたのが2005年、遠藤さんが若干まだ23歳の時でした。さらに、2009年には「ダイニングバーエンズ(現:ラウンジバーエンズ)」として、これまでの10席から40席の店舗に移転リニューアル、気軽にイタリアン料理を楽しめるようにしました。

◆同友会への入会と経営理念。あなたの心を幸せに。

2011年「ただ良い話を聞くだけじゃなく、経営の悩みも聞いてもらえるし、議論をしあえるようなフィードバックできる場のある勉強会があるよ」と、友人の紹介で静岡県中小企業家同友会に入会しました。経営指針研究会にも入り、経営理念を磨き上げる機会にも恵まれました。「笑顔をつくる、幸せにする」そうしたコンセプト・想いを理念の隅々込め、毎日スタッフと唱和するようにもなりました。

創業時は店長兼シェフでスタートした遠藤さんも、いつしか、経営計画や仕組みをつくり、人を育てて任せる、文字通りの「経営者」として、さらなる成長を遂げています。同友会活動も、今では、仲間たちと全国イベントにも積極的に参加し、同友会の学びを深めています。

◆新店舗展開と牡蠣との出会い。

遠藤さんは2013年、これまでのイタリアン料理とは別のコンセプトの店舗を企画し、スペインの小皿料理に着想を得た「フジヤマタパス」を同じく富士宮市内にオープンしました。100席近いパーティ利用も可能な柔軟な店舗スペースで、お客様にも好評を得ていきました。


そうはいっても、やはりサービス産業、年間を通じて見ると、やはり景況の波が必然的に出てきます。特に、2月と9月が非常に厳しく、この業界のジンクスを打破したい、それでいて、お客さんにも幸せになってもらえるものは無いかと、様々なメニューや食材を研究、試行錯誤する日々の中で着目したのが牡蠣でした。

◆安全に、美味しく牡蠣を提供したい。

みんなも大好き、自分も大好き、栄養も豊富な牡蠣を安心して提供したい。身近で食べられるようにしたい。でも、安全性が気になる。そんな中、「オイスターマイスター」の資格の存在を知り勉強をはじめた遠藤さん。衛生管理基準、産地選定、生物学的な牡蠣の特性、加工技術等など、様々な知識や技術を学び、試験にも無事合格しました。

★オイスターマイスター協会ホームページの紹介文(外部リンク)
http://oysters.jp/ens.php

これでいよいよ・・・と思いきや、遠藤さんは違いました。

「しかし、それだけではまだ不安。本当に、安全な牡蠣が産地で加工されて出荷されているか?」

この目で確認すべく、遠藤さんは広島、兵庫、石川(能登)など、実際に現地に赴きました。時には生産者さんと一緒になって牡蠣の種付けなども取り組み、牡蠣の最前線をその目、その手で確かめ、信頼できる取引先を選定しました。

そしていよいよ満を持して2014年3月、オイスターマイスターの提供する牡蠣の販
売開始。

ほぼ毎日のように、産地から大粒で新鮮な牡蠣が届きます。あっという間に完売していき、手応えを感じました。牡蠣の旬といえば冬ですが、年間を通して提供できるよう、産地の特性、出荷スケジュールを確かめながら、夏季でも牡蠣が食べられるようにしています。8ヶ月(2014年11月現在)たった今、フジヤマタパスの名物といえば、大粒で新鮮な牡蠣!というまでになりました。

◆日本中の人の笑顔をつくる!!

遠藤さんの掲げる「お客さんが喜ぶ、幸せになる商品を、きちんと、そして適正価格で提供する。」という経営理念の実現に終わりはありません。

お店の入り口に掲げられた経営理念。そしてその横に書かれたスタッフ一人ひとりの想い。料理を通じて、日本中の人の笑顔を作りたい。そんな純粋な思いを日々具現化するエンズグループのこれからが楽しみです。

取材・文:田邉 元裕氏(有限会社カボスメディアワークス・富士宮支部)

報告者の海野氏

報告者の海野氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静岡支部11月例会は、清水区でサッシ、エクステリア、ガラス等の販売・施工・修理工事を主に行う海野サッシ商会(静岡支部会員)の海野敦氏が登壇。「真の経営者になる。職人ではだめだ!」と題して我が経営を語りました。
昭和44年に海野氏の父が創業。働く父を幼少期から見て育ちました。平成3年に両親と社員の姿を見て、家業を継ぐ決心をしました。職人として仕事に勤しみながら、社員と奥様とで困難を乗り越えていくも、リーマンショックの影響は大きいものでした。仕事量、売上共に減っていきました。そのような状況の中、お客様から同友会に誘われ、入会しました。同友会では経営指針を創る会を受講して経営理念を成文化しました。理念‐方針‐計画に基づき、自らが行う仕事が明確になりました。小回りが利く自社の強みを生かした仕事の確保、技術継承のため人材確保、建設業のネットワークづくり等に挑戦していく、職人から脱却した経営者としての覚悟が聞かれる報告となりました。
報告後、会社を伸ばすために何をしていますかをテーマにバズセッションを行いました。参加者は各グループに分かれ、自社事業の課題や戦略を深め合いました。

10月4日、静岡同友会有志10名で墨田区を訪問してきました。訪問の主旨は、墨田区は1979年、全国に先駆けて中小企業振興条例を制定し、条例の精神を実現するために、産業振興マスタープランなど策定し、具体的な施策を展開。行政と産業人が一体となって地域活性化を実現している成功事例を学ぼう、というものです。6月の「憲章・条例学習会」で講師を務めて頂き、墨田区の事例についてご報告頂いた、墨田区企画経営室長の高野祐次氏に訪問をお願いして実現したもので、当日はご案内もして頂きました。

最初に、墨田区が推進する3M運動(マイスター・ミュージアム・マニュファクチュアリング)を行っている「片岡屏風店」を訪問しました。社長の片岡恭一氏は「すみだマイスター」に認定された職人で自社を工房(製造現場)と店舗が一体化したショップを経営し、そこでオリジナル商品が創られ自らの手で販売されています。また、店舗2階では屏風作り体験もできるようになっていて、「もの売り」だけでなく「こと売り」も行い、ものづくりの楽しさ・素晴らしさも伝えていました。

次に、スカイツリータウン内にある「産業観光プラザすみだまち処」を視察しました。こちらはスカイツリー内の東京ソラマチにあり、墨田の産業・文化・歴史・観光などの魅力を発信する施設となっています。

続いて区内循環バスを利用してキラキラ橘銀座商店街へ向かい、シャッター街と化した厳しい環境下でも頑張っている商店街を視察しました。

昼食後は、新ものづくり創作拠点「ミュー」を訪問しました。元自動車板金塗装工場をリノベーションしたレザー・ラボで革にまつわるサービスを提供、こちらも職人体験が出来、墨田区産業振興マスタープランに基づく支援を受けている工房で新規事業として行政から支援をうけているという事でした。その後、すみだガラス市・すみだまつりを見学し視察終了となりました。

今回の視察で、6月に「振興条例は墨田区民にとって空気みたいなもの」と高野室長が言われた意味が理解できました。静岡県も、県民にとって空気みたいなものと感じられる振興条例が制定できれば素晴らしいな、と感じた視察研修でした。

記事:桑﨑 雅人氏(㈲島村歯車製作所・沼津支部)

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お客様目線のデザインで販売促進を支援

デザイン工房 眠猫堂(ねんねこどう)

西子 清英氏(静岡支部)

事業内容   ホームページ制作、イラスト、ロゴマークデザイン、POP等各種印刷物デザイン

創業     2009年12月

社員数    2名

入会     2012年4月

所在地    静岡市清水区江尻東3-10-26 エスペラール清水303号

URL    http://nennecodo.com


奥様による似顔絵

お客様の気持ちに寄り添う提案

2010年に脱サラし、当時奥様が副業でやっていたデザイン事業に加わり、本格的にデザイン事務所の経営に乗り出しました。主な仕事は、ホームページデザイン、似顔絵イラストやロゴマークの制作、各種SNSのカスタム。また、集客アップに繋げる店内POPやポイントカードなど、販売促進全般の提案も行っています。全体デザインと営業は西子氏が担い、イラストは奥様が描きます。お客様の多くは中小企業。地元の美容院、エステ等の個人等です。持ち前のフットワークの軽さと個人店にも良心的な価格設定で、お客様の気持ちに寄り添う提案を大切にしています。

二人三脚でお客様の先を見る

経営で特に大切にしていることは、「人を見て法を説くこと」「お客様の先のお客様のことを思うこと」。いずれも前職で学んだことのようです。難しい専門用語を分かりやすい言葉で言い換えて伝え、お客様の立場に立ってホームページやPOPのデザインを行っています。お客様に書いていただいたホームページ掲載原稿などをエンドユーザー(お客様の先のお客様)の視点に立ち修正提案できることが、お客様に喜ばれているようです。今後も奥様と二人三脚でやれるところまで顔晴(がんば)っていきたいと語ります。

多くの機会に参加したい

2012年に青山達弘氏(静岡支部会員)の紹介で同友会に入会されました。「これほど親身になってアドバイスをいただける会は他にはありません。これからも多くの機会に出席して勉強していきたい」。会内での紹介や、直接の引き合いもあり、順調にお客様を増やしています。

取材:青山 達弘氏(㈱青山建材工業・静岡支部)
藤本 浩氏(プリントバリュー㈱・静岡支部)
記事:藤本 浩氏

自分で考えさせる経営で社員の自主性を高める企業

㈱河村バーナー製作所

代表取締役社長 杉山 誠氏(榛原支部)

事業内容   食品・工業用乾燥機の設計、製造

創業     1953年

設立     1973年

社員数    44名

入会     2004年4月

所在地    静岡県牧之原市片浜514-3

URL    http://www.kawamura-burner.co.jp


杉山 誠氏(左から2人目)

ニッチ産業でのトップシェア

昭和28年、重油配管業として創業しました。その後、バーナーの製造から熱風発生器、加熱・乾燥機装置まで、お客様の要望や設置する現場に適応した機械の設計・製造・アフターサービスまで自社一貫体制を敷くまでに拡大しました。現在は「釜あげしらす・ちりめん製造設備」「製茶用熱風発生器」「各種加熱・乾燥装置」「超音波洗浄機」「板金加工」の5本柱で事業を展開。特に釜あげ・ちりめんの製造設備では国内トップシェアを誇ります。自社で部品製造することによって他社との差別化もはかり、コストダウンや性能アップに繋げています。

5代目後継者の想い

大手企業に勤め、設計一筋の技術屋だった杉山氏が入社したのは13年前。2代目社長の河村猪富氏から誘いの声が掛かりました。前社長のオーラと経営に対する熱い思いに感銘して入社を決意。そして昨年社長に就任し、社員とその家族の生活を守るため日々奮闘しています。会社は社員のもの。社長がなんでも意見するのではなく、社員が自発的に発言・行動できる社風を心掛けています。「人はミスをして初めて真剣に振り返る。一時の小さな損失は、長い目でみればそれは大きな財産となる。遠回りかもしれないが成長を期待している」と社員を見守っています。

永続する企業に

景気の良い時でも大きく手を広げず、悪い時でもコスト重視にならず、お客様と真摯に対応することで必要とされる会社になる。今年入社した新入社員が定年まで働き続ける、未来へと続く会社を目指したいと抱負を語りました。

取材:杉本 かづ行氏(㈲静岡木工・榛原支部)
河内 崇文氏(㈱スマートブレイン・榛原支部)
紅林 輝勇氏(共和建設㈱・榛原支部)
記事:杉本 かづ行氏

私は2011年に第8期「経営指針を創る会」に参加しました。その3年前、2008年のリーマンショックの影響は甚大なものでした。売り上げは4割落ち込み、翌年もそこから更に2割減少、両年ともに年間売上比30%超の営業損失を計上しました。幸い2010年から回復基調に転じ、「さぁ出直しだ」と全社で意気込んでいる矢先、東日本大震災が起きました。我が社では大きな被害はありませんでしたが、関東方面の顧客からの注文はストップ、また計画停電の影響で生産ラインの混乱が続き、体調を崩す社員が続出しました。今思うとなぜそのような時期に創る会への参加を決意したのか、正直良く覚えていません。

リーマンショックと震災後の混乱は想像以上に大きな傷跡を残していました。金銭的損失はもとより、特に深刻だったのは経営者である私の精神面の影響でした。景気動向など外部環境に左右されやすい自社事業の将来性を悲観し、事業転換ばかりを考える日々。参加した創る会でもそのことを口にしていました。その時ある先輩にピシャリと「そんなことばかり考えて、今の仕事を一生懸命やってくれている社員に恥ずかしくないのか」と言われたのです。その時は「俺だって社員のことを一番に考えている、うちの会社の事など何も分からにくせにっ!」とムカムカしながら三島まで帰ったのですが、一日、二日と時間がたつに従いその言葉がだんだんと腑に落ちてきました。確かに自分の分析は甘かったかもしれない、可能性があるかもう一度徹底的に考え直そう、と…。結果的に「可能性」はありました。それは他社がやりたがらない、場合によってはリスクを伴う仕事ですが、我が社は新たな一歩を踏み出しました。勇気が要りましたが、その勇気をくれたのもあの先輩の一言でした。

経営指針は羅針盤に喩えられますが、その目的地をどこに定めるのかは船長が決めます。私は創る会のおかげで目的地を誤らずにすみました。導いてくれた諸先輩方と同期の皆さんには、心から感謝しています。

経営指針を創る会8期卒業生 三田 宏一氏(㈲エムケイテクノ・三島支部)

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県同友会設立40周年記念特集 設立メンバーが語る同友会

第四回 小野 清氏((有)小野美術印刷所・静岡支部)

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同友会に入会したのは私が38歳の時です。入社して10年間を2番手として、激動の時代を無我夢中で過ごし、落着が出た時に経営者として欠けている事に焦りを感じていた頃、お客様でもあった勝又悦朗氏(静岡同友会顧問)に誘われての事でした。

会発足の準備を進めてきた十数名を中核として静岡同友会は生まれたのですが、この中核メンバーが本当に凄い方ばかりでした。「中小企業の経営者が業界を超えて集い、本音をぶつけ合い学び合える会を創ろう」という熱い想いを目の当たりにした事、そしてそのような経営者達との出会いは、若い時分の私にとって絶大なカルチャーショックでした。これは、私に経営者としての土台が出来ていなかったから受けた衝撃であり、この時に「謙虚に学ぶ」という同友会の原点が刷り込まれたのだと思います。

同友会では、業種や立場の異なる方が集い、経営者としての成長の為に学び合います。私も会活動に参加し、学びを自社に持ち帰り実践しようとするのですが、土壌も風土も違うので、すぐに効果は出ません。しかし、いつしか姿形を変え、自社や自分の内に根付いているのです。だから、間口は広く構えた方が良い。有形・無形を問わず、何からでも学べます。私自身も、会活動の都度「これを学んだ」と実感していた訳ではないのですが、活動への参加を通じて、身に染み入るように学んでいる事が沢山あるのです。これは、同友会の原点が「学び合い」にあるからです。会員が互いに学び合う中に身を置き、「謙虚に学ぶ」という姿勢で活動に参加していた事で、数えきれない程の学びが自然に蓄積されたのだと思います。

これまでの40年の間で、会での学びに物足りなさを感じて退会された方もありました。しかし、同友会には、経営者として上を目指し学びを求める、素晴らしい経営者達が集まっています。これはつまり、「どのような人からも学べる」環境なのではないか、と私は思います。

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さて、同友会はどうあるべきかという事を考えると、私は「何を目指せ」というのではなく、その時に在籍する会員の資質が会の方向性を生み出していくのだと思っています。設立当時の中核メンバーは、皆エネルギーに溢れていました。凄いメンバーの中で、「参加していいのだろうか…」と不安にさえなる程でした。
結果として参加し、彼らから受けた衝撃が今の自分の土台をつくっています。詰まる所、人との出会いが人間を作っていきます。そういう中で、経営はどうあるべきかを学び合う、経営者の素地を創る場が、同友会の本質なのだと思います。

設立当時は、今には無い学びがありました。出来上がっている中に入るのと、創り出すのとでは、根本的に違います。生み出す事に対して皆がエネルギッシュであり、またそのような活動の中だからこそ学べるものがありました。発起人は、大変なエネルギーを持っていました。会発足当時は、形の無い中を手探りで活動していた為、いろいろな事がありました。それこそいろいろな問題も起こりましたが、それを目の当たりにしてきた事が、自分を作ってくれたように思います。

一方で、裃を脱いで謙虚に何でも受け止めるという基本的なものは、時代や環境が変わっても、何も変わっていません。当時の人達の精神が受け継がれ、時代毎に集まった人達のエネルギーがその時代の同友会の方向性を創っていくのだと思います。

このように、同友会の「方向性」とは、自然と生まれるものだと思っています。
そして、今の静岡同友会には、誰かに大義を押し付けられるのではなく、皆から自然と生まれる形で「同友会としての品格」というものがあっても良いと思います。この自然と醸される品格を、新しく入る人達が自然と感じる、というのも良いのではないでしょうか。

これは、皆が優等生になれ、という事ではありません。言動や考え方を通じ「さすが同友会」と思わせるもの、そのような「品格」を目指しても良い時期にまで、今の静岡同友会は育って来ていると私は思います。

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振り返ると、設立メンバーの中には、倒産や、それ以上に悲しい別れ方をした方がいます。人生の中で、どうにもならない事はあります。いわゆる「時代の女神」に去られてしまった方々は、その結果からいろいろな事を教えてくれています。皆さんには是非、そこからも学んで欲しいと思います。

一方で、彼らの強い想いは、今なお会内に受け継がれ、息づいていると感じます。設立に際しては、発起人メンバーは熊本まで赴いてそのノウハウを学んできました。その熱意や当時の苦労を、今の時代に体験する事はできません。時代毎に環境が違い、得られるものもまた異なります。言い換えれば、どのような場面、場合にも、得るものはあります。

かつては「学ぶ」という事より「会をどうしていくか」に奮闘していました。先人が苦労しながら創り上げた同友会の中で、今の時代の方が、学ぶ為の環境は整っていると思います。上辺ではない知恵やアドバイスを受けられる同友会で、皆さんも活動を通じて、沢山の事を得て欲しいと思います。

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自身を振り返ると、私は人に対し畏れを持っています。私は「誰からも学べる」と思っていますが、学べる方に出会うという事は、自分には無いものを持っている方に出会うという事でもあります。それが、私が人に対し畏れを持つ理由です。

畏れとは即ち謙虚に学ぶという事に繋がり、これが無いと、どれ程よい学びも頭の上を素通りしてしまいます。「学ぶ姿勢=経営者としての素地を学ぶ」という事は何よりも大切です。同友会は「学び方を学ぶ場」と言われますが、これは会を実に良く表しています。この「学び方」が全ての土台になります。

勝又氏は私にとって人生の師であり、本当に凄い出会いをさせて頂きました。人間を育てるのは「出会い」だと思います。ただ、出会いをすれ違いにせず成長のきっかけとするには、何かしら互いに共鳴するものが無ければならず、そのようなものを自分が持っていなければなりません。私にとってそれは、謙虚さだと思います。謙虚さがあれば、出会いの扉が開かれます。

ono-shuzai

会員の皆さん一人ひとりが、大なり小なり同友会の理念に共感し、実践されていると思います。その理念がどれだけ咀嚼されているかは、貪欲に、謙虚に求めていく姿勢の現れだと思います。

何かを学び得る為には、大前提として「学ぶ気持ち」「学ぶ姿勢」が無ければなりません。学びを学びとして受け容れられる資質、何からでも学べるという気持ちや姿勢が大切です。「学ぶ」という事を知る事から始まるのです。

成長に「ここまで」はありません。一方で、人生は長いようで短いです。同友会は、肌が触れ合うような人との出会いがあり、そこに沢山の学びがあります。
目標でもある勝又氏をはじめ、私は全国の数々の凄い方に出会い、まさに「会員はそれぞれに辞書の1ページ」を実感しています。学びを感じ受け取る感性と、経営者の土台とも言える「謙虚に学ぶ」という姿勢を学び、皆さんの出会いを成長に繋げて欲しいと思います。

インタビュー:青山 達弘氏((株)青山建材工業・静岡支部)
望月 宣典氏(清水クレジット(株)・静岡支部)
髙田 奈々氏((株)ギャロップ・静岡支部)

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