【逸品】伊豆と言えば㈱祗園の「いなり寿し」

会員企業名 ㈱祇園 創業 1946年
会員名 守谷 匡司 業種 弁当・製造・販売
所属支部 伊東支部 従業員数 正規5名、パート16名
会暦 2014年8月入会 事業内容 弁当・そば・うどん・飲料

創業72年の老舗駅弁屋

 守谷匡司氏が代表取締役を務める㈱祇園。1946年に守谷氏の祖父が、いなり寿し専門店として創業しました。その後、1949年に㈱祇園として法人化以降、伊東駅への出店、駅そばの開始、普通弁当の発売なども行っていきました。守谷氏は1999年に同社へ入社。当時の会社は、実質上経営者がいない状態でただ運営しているという、今考えてみると恐ろしい状態だったとのこと。2001年に道の駅伊東マリンタウンへ出店と新たな展開をしていくなかで、2010年に5代目社長に就任。会社の仕組みが時代に合っていなかったことに気付き、まずは事業の再生に取り組みました。


地域と商品が一体となるような企業づくりを目指す

 ㈱祇園は経営理念の中で「私達は伊豆を代表するローカル・ブランドとして『おいしいもの』『品質の良い安全な商品』を提供します」と掲げています。この理念について守谷氏は「『伊豆と言えば㈱祇園のいなり寿し』と言われるくらい、地域と商品が一体となるようにしていきたい」と話します。今回の表紙になっている「いなり寿し」は、創業当初からの看板メニューです。これは、創業者の義母の実家が稲荷神社ということがきっかけでした。戦後のまともに食べる物がないような時代に美味しい物を提供したいという思いで、白米と砂糖をたっぷり使った甘く濃い味のいなり寿司ができました。原材料の高騰など、様々な外部環境の変化の中でも、素材には良い物を使用し、多くのお客様に喜んでもらえるように美味しさにこだわって作っています。「時代を超えた普遍的な美味しさ。シンプルだけど奥深い。そんな商品づくりを続けていきたい」と守谷氏は話してくれました。

<懐かしさと美味しさにこだわり抜いたお弁当>


社員の成長が会社の成長に繋がる

 現在、伊東市内に4店舗を展開しています。守谷氏は「それぞれの店舗で安定的に利益を出し、お客様だけではなく、働く社員の会社や仕事に対する満足度も高めていきたい」と語ります。守谷氏は2014年9月に同友会に入会後、自社の状況をオープンにし、社員とコミュニケーションを取り、会社としての方向性を明確にしていきました。そのような地盤作りの上に、同友会での学びや、そこで得た他社の取り組みなどを生かしています。「会社の質を高めることで、より良い商品をお客様に提供できる」と語る守谷氏、伝統の味を守りながら社員とお客様の幸せを追求し続けます。

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取材・記事:鈴木 将大氏(㈲東亜電気工業・伊東支部)


つなぐことのお手伝い…家・家族・職人技そして日本らしさ

㈱育暮家ハイホームス

代表取締役 寺坂 麿氏(志太支部)

事業内容:住宅の新築・リフォーム

設立:1985年

社員数:正規7名、パート1名

入会:2014年6月

所在地:藤枝市青南町2-8-7

URL:https://hihomes.co.jp/

30度を超える暑さの中、育暮家ハイホームスさんへの訪問。田園を通り抜けた風と傍らの扇風機ひとつでも汗が自然に引いていくクーラー不要のオフィスでの取材が始まりました。


創業から事業承継へバトンは確かに託された

   寺坂麿氏が経営する育暮家ハイホームスは現在34期目。先代の杉村喜美雄氏が、住宅リフォーム業として創業しました。創業4年目頃には新築住宅の分野にも参入。「日本の原風景を残したい」「古民家の再生にも関わりたい」「近くの山の木を家づくりに活かしたい」こんな創業者の想いが経営理念となって、様々な活動を具体化してきました。
 寺坂氏は先代から平成30年にバトンタッチした2代目です。先代の杉村氏の娘さんと結婚した当時は、自動車部品を製造する会社で管理職になろうとしていました。杉村氏は、自身の想いのつまった事業を誰に託そうかとずいぶん悩んだそうです。ある日、娘さんの家で事業承継の話を出した時、寺坂氏が身を乗り出して来た時はビックリしたとのことです。杉村氏が師と仰ぐ、石川同友会の喜多計世氏(喜多ハウジング㈱ 取締役会長)に挨拶に伺った時、喜多氏から「二人きりになっても信念を貫け」と励ましていただいた寺坂氏は、創業者の想いの詰まった経営指針を引き継ぐことに。同時に、先代と入れ替わる形で同友会に入会しました。


2代目としての同友会、創業者との約束

  「入会後は、同友会メンバーの経営にかける想いの強さに圧倒されて気後れするばかりでした」と語る寺坂氏。激務がたたり体調を崩したことも重なり、次第に同友会活動から遠ざかっていきます。しかし代表取締役を任された今年、創業者とある約束をします。「数年後、同友会の例会で事業継承について寺坂氏に話してもらいたいというオファーがくるような事業継承をしよう。それをひとつの目標にしよう」と。この約束を果たすため、同友会活動のギアを入れ直そうと思ったタイミングがこの取材と重なったわけです。


差別化から独自化へ 人間としての付加価値を高める取り組み

  寺坂氏は現在、人口減や少子高齢社会、エネルギー問題、職人問題など、多様化する住宅を取り巻く課題に一つ一つ答えを出していこうとしています。また、経営革新を取り『わが家の省エネ手帳』というアプリを作成し「暮らしづくり」にも取り組んでいます。目指すは「差別化から独自化へ」。それを徹底的に極めていくために、社員との価値観の共有は必要不可欠です。価値観を共有しながら、社長や社員の人間としての付加価値を高めていけるような経営を実践したい、と力強く話してくれました。

取材・記事:村松 繁氏(保険アイマーク㈱・志太支部)
取材:吉田 和弘氏(吉田道明税理士事務所・志太支部)
   寺田 卓正氏(㈱ニューウェーブ・志太支部)


愛する人を見送る心に寄り添って400年

㈲佐藤葬具店

代表取締役 佐藤 浩美氏(三島支部)

事業内容:葬儀施工、仏壇、仏具の販売、小売

創業:1624年

社員数:正規10名 パート数名

入会:2012年4月

所在地:三島市西本町1-27

  三島広小路駅から徒歩3分、駅近郊の賑わいのすぐそばに㈲佐藤葬具店はあります。その経営者であり、同友会歴7年目となる佐藤浩美氏を訪問しました。同社の歴史は古く、起源は寛永元年(1624年)にまで遡ります。当時の宮大工はその技術から、棺桶や仏具を造るなどの仕事を任されていて、おそらくその流れから、今の葬儀社という職業に移っていったものと考えられています。 さて、店舗の看板(外観写真)には歴史の重みが伝わってくる「佐藤造花店」の文字。何故、葬儀社なのに「造花店」なのか? かつては、葬儀社では祝いの花輪なども扱っていたため、同業者の多くが「造花店」と名乗っていたそうです。


「縁でいんぐノート」の想いと、店舗改装

 2017年11月に店舗を改装し心機一転、忙しい日々を送る佐藤氏。一般的に葬儀というと、重苦しい雰囲気や見えにくい料金なども相まって「大事なことではあるが、なかなか相談などに踏み込めない」と思う方が多いそうです。そんなイメージを払しょくし、もっと気軽にお客様に遊びに来ていただきたい、萬処でありたいという思いから、木のぬくもりを基調とした店舗に改装しました。佐藤氏が発案した、エンディングノートならぬ「縁でいんぐノート」も、その考え方にリンクしたもの。形式に囚われることなく「本当はどんな葬儀をしたいか」を見える化することで、お客様の葬儀に対する思いが明確になってくる仕組みです。「お客様の理想の葬儀を実現したい、お客様との縁を大事にしたい、葬儀を考えることで同時にご自分やご家族、御身内を振り返り一層大切にして頂く良い機会にしてほしい」という佐藤氏の想いが、「縁でいんぐノート」という形になりました。


自身のつらい体験と良い葬儀への思い

  「送ってもらう側もそうだが、送る側が後悔せずに、満足した式を行うことが最も大事」と言う佐藤氏は、自身もつらい思いの中で、社長を引き継いでいます。20歳の時に当時の社長であるお父様を亡くされ、その後を引き継いだお姉様は、44歳の若さでこの世を後にしました。その間にお母様も亡くされていて「仲の良かった大切な家族のつらい旅立ちを経験したからこそ、お客様に信頼され、寄り添えるようになったのかもしれない」と佐藤氏は語ります。
 お客様との信頼関係があるからこそ、葬儀が終わってもお店に立ち寄ってくれたり「佐藤さんに頼んで良かった」と言ってくれたりするお客様が以前にも増して増えている、とのこと。「この言葉を聞くことが、この仕事をやっていて良かったと思える瞬間だ」と佐藤氏は言います。お話を聞いていても、相当つらかっただろうと思いますが、それを経験にしてより一層お客様との縁を繋いでいく、佐藤氏の人間としての強さ、そして経営者としての力強さを感じました。同友会で学んでいる時とはまた違った佐藤氏の一面を見た気がします。私自身も「送り、送られ」という瞬間は必ずやってくるので、考えてみようと思う時間になりました。

取材・記事:山下 直毅氏(㈱サンアイ電工・三島支部)
取材:秋山 敦氏(㈱秋山建設・三島支部)

2018年7月19日(木) ロゼシアター 参加35名

2017年度~2018年度入会の5名が、それぞれの業種や自社事業に対する想いを報告しました。

飯野明宏氏(飯野明宏税理士公認会計士事務所)は、2017年度6月に創業し、同時に同友会に入会。会社を経営していく上で、専門的な知識の向上とともに、「経営理念を掲げ、人材を雇用するため稼ぐ」という言葉に共感しました。

大井剰慈氏(㈱SET UP)は、2018年3月に創業し、4月に同友会に入会。サッカーで鍛えた体でとび職に励み、一般的には職人生命が短い業界の中で、長く働ける企業づくりに挑戦しています。

西脇明美氏(からだビューティ研究所)は食物繊維と発酵食品の販売だけでなく、パスティング(断食)インストラクターとして食の改善を目的とし、信頼関係ある仕事を心がけています。

堀田久美氏(Women’s Health NAO)は菜桜助産所と合同会社asterisk柚で日々活動しています。女性の幸せをサポートするとともに、骨盤底筋ケアにも全力を尽くしています。

吉岡真一氏(㈲ヨシオカ)は父から受け継いだ吉岡商店を㈲ヨシオカに法人化。金属リサイクル企業です。社長歴30年の中で教わった「儲けたお金は預り金、損したお金は預り金を返したと考える。損したと考えてはだめ」という考え方を大事にしていることなど、会社を向上させるための強い意志が伝わってきました。

各々が発表に向けてこれまでを振り返り、考え、緊張して当日をむかえたことでしょう。それがまさしく同友会の「学ぶ」ということだと思います。

記事:清野 泰成氏(富士石材・富士支部)

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2018年7月23日(月) 三島商工会議所 参加29名

支部長の柳楽洋一郎氏(㈲ゼロ)による7月例会の報告は、波乱万丈な経歴から始まりました。自動車パーツ販売事業を立ち上げ、順調に売上を伸ばしますが、途中でアパレル事業に参入し大きな失敗をします。在庫過多による利益圧迫や社員のトラブルなどがあり、知識が少ない業種に取り組んだこと、社員とのコミュニケーション不足を痛感されました。

その経験を活かし、現在では自動車パーツ関連、特に防犯や事故減少を目指す理念に忠実に、ドライブレコーダーやセキュリティ関連を伸ばしたいとのこと。会員の理解を深めるために、レコーダーの動画や車両盗難件数など、社会的データに基づいた自社の戦略であることを説明しました。これには、多くの会員がレコーダーを欲しいと思ったに違いありません。そして、現在の課題として「店舗移転に伴う顧客減少」と報告しました。

これを受け、グループ討論は「これからの時代、顧客を獲得する施策とは?」というテーマで行いました。同グループの葬具販売業、コンサル業、建築業などの方々と活発な意見交換が行われ、例えば「24時間体制で使い方の問い合わせできるサービスを追加」「高齢の親をもつ人にアプローチする」などといった、多くの意見が出ました。サービス強化や売る相手を変えるなど様々な切り口やアイディアが出るのも、異業種で年齢もバラバラである同友会だからこそだと感じました。

顧客獲得は、私達経営者の共通の悩みの一つであると思いますので、参加者全員に学びとアイデアが得られた例会になったと思います。

記事:森田 拓真氏(ピクシス・三島支部)

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