「今後30年を見据えた中小企業における組織力強化の重要性」。若き経営者、下山 昇一氏(㈲下山製作所)による、改革の軌跡の報告でした。

企業において人材育成・組織力強化は共通の課題ですが、下山氏はこの課題に正面から取り組んでいます。報告では、自社の強み、弱みを冷静に分析した上で問題を把握し、その問題を「基盤強化」「人材育成」「組織力強化」「環境改善」に分類し、さらにそれらを多層的に検討することによって、より具体的な行動・実践へ繋げていくという手法・課程が、見事に可視化されていました。

さらに、この報告を理解し易いものとしていたのが、下山氏のプレゼンテーション能力です。今回、下山氏が示したプレゼンテーション能力は、意識の共有、目的の共有等、下山氏が行っている改革の大きな推進力になっていることは間違いありません。下山氏は、経営者自身の研鑽もまた改革の必要不可欠な要素であることを示しているのです。

現在進行している改革の結果、さらなる改革の実践。下山氏の次の報告が、今から待ち遠しく感じられました。

土屋 賢太郎氏(弁護士法人こだま法律事務所・三島支部)

静岡県中小企業家同友会顧問であり静岡大学名誉教授の山本義彦氏を招いて、政策委員会の企画による例会が開催されました。


支部政策委員会活動報告をする遠藤 正人氏


県条例草案WGの報告をする佐野 譲二氏

初めに遠藤正人氏より政策委員会の活動報告、続けて佐野譲二氏より県条例草案ワーキンググループからの報告がありました。同友会の地域づくりの考え方は「会社づくり、地域づくり、仲間づくりの3つの課題の総合実践」である事、そして、地域づくりの主体者として中小企業経営者が働きかける事の意義がひしひしと伝わる内容でした。

山本 義彦氏

山本先生による講演は、静岡県の地域特性を踏まえた上で、その工業や農業を歴史的、経済的に分析したものでした。わずか1時間の持ち時間では語り尽くせない程の膨大な資料を元に、他都道府県と静岡県との比較や、静岡県の工業、農業の地域的な特性、今後の展望について話されましたが、「静岡県という単位での経済システムは存在しないため、地域ごとにその特性を分析することに意味がある」という事と、「これからは大企業の時代でなく、構造変化に柔軟に対応できる中小企業の時代になる」という話が特に印象的でした。

望月 光太郎氏(㈲望月・富士支部)

 

私はコンビニエンスストアのセブンイレブンを経営しています。6年前に父から2店舗を譲り受け、最初に社長として行った仕事が店舗の移転でした。ところが移転した店の経営が全くうまくいかず、焦りと苛立ちがつのるばかりだった時に紹介された団体が、この中小企業家同友会でした。

それまで全く触れたことのない異業種の経営者の方々から色々な話を聞き、経営を学ぶ姿勢というものが養われつつあった頃に、経営理念の存在を知りました。そして、支部内で多少学んできたつもりだった私は、10期生として創る会に入会する頃には、自分なりに経営理念、経営指針とは何ぞやと、少し高をくくって入会したことを覚えています。

しかし実際に創る会で勉強を初めた途端、自分がいかに経営というものを軽んじていたのかを思い知らされます。「会社は誰のためにあるのか?」「経営理念とは誰に発信しているものなのか?」「自分が描く企業の将来像とは何なのか?」「ワーク・ライフ・バランスとは?」ひとつひとつが壁になって立ち塞がります。自分がやってきたことは、ただ数字の上っ面を撫でて経営者気分に浸っていただけだったのです。

そんな私でもいくつかの学びを得ることが出来ました。ひとつは、社員、従業員が働きやすい環境を作れるのは経営者しかいないと自覚できたこと。そして自社の事業とは何なのかとイメージできるようになったことです。ただモノを売るだけでなく、人々の生活に欠かせないインフラとしての機能を充実させていきたいという思いや、ここで働くアルバイトがいつか社会に巣立つための人材育成の場として活用できればと考えるようになりました。

まだまだ志半ばですが、地域住民の生活を支える必須の存在となるべく歩み続けたいと思います。

経営指針を創る会10期卒業生 望月 光太郎氏(㈲望月・富士支部)


同友会活動を礎に、着実に発展

㈱ラプト

代表取締役 山田 康彦氏(静岡支部)

事業内容 インターネット付随サービス業

設立   2000年

社員数  正規 30名

入会   2004年1月

所在地  静岡市駿河区南安倍3-20-24

URL  www.rapt.co.jp/


山田 康彦氏

システムとデザインの二本柱で構成

㈱ラプトは、主に社内LAN構築や、コンピューターの導入・セキュリティ等、システム・ネットワークを取り扱うラプトシステムと、ウェブサイトや印刷物・広告等、デザインを取り扱うラプトデザインからなります。

事業領域を拡げて成長

15年前、3~4人のメンバーで起業した頃は、システムメインでスタートしました。システムという仕事をやっていくと、デザイン業務の引き合いもありました。以前より、明朗会計のデザイン会社があっても良いのではないかという思いを持っていた山田氏は、スタッフを集め、社内にデザイン部門を立ち上げました。

デザインという仕事は、持ち出しも多く、当初軌道に乗るまでの間随分苦労をされたようです。現在では、顧客である経営者の思いを聞き取り、商品やサービスの本質を捉え、企業ロゴ、ウェブページ、印刷物等のデザインをトータルして提案し、顧客のブランディングのお手伝いをされています。その後、順調に会社は大きくなり、スタッフも増え、事務所も何回かの移転を経て、広い3階建ての現在地に移転されました。

同友会とのかかわり、そして今後の展望

山田氏は、普段の例会に参加することは勿論、支部
内の有志で行っている千寿会という会合にも積極的参
加してきました。千寿会では、多くの先輩経営者の方
たちと交流を持ち、アドバイスをいただいたようです。
山田氏は、同友会活動の中でも、特に千寿会で学んだ
ことは大きかったと回想されていました。

今後の展望としては「新会社を立ち上げ、そこで、
ご自身の今までの経験・人脈を活かして、もう少し広
い分野・地域で活動を行っていきたい。そして、その
成果をラプトにフィードバックしていきたい」と語っ
ておられました。

取材・記事:藤本 浩氏(プリントバリュー㈱・静岡支部)


「人と人とのつながりを重んじる経営指針」

㈲勝又造花店

代表取締役 勝又 薫氏(御殿場支部)

事業内容 冠婚葬祭業・各種イベント設計施工

設立   1973年(昭和48年)

社員数  正規 4名 パート 5名

入会   2010年2月

所在地  御殿場市御殿場575-1


勝又 薫氏(写真中央)

先代から継承し現在まで

 お父様が創めた葬儀会社に2代目として入社したのは21才の時。その後、同業他社で4年間丁稚奉公のような形で修行した後、勝又造花店の後継者として帰ってきました。

先代が逝去して代表取締役を引き継ぎ、まず初めに取り組んだのは “自分のお客様を作る” 事でした。同じ御殿場市内でも地域によって違う葬儀の風習を把握することで、少しずつお客様を増やしいてきました。また時代と共に自宅葬からホールでの式を行う事が多くなり、ニーズに合わせて平成18年には葬祭用ホールを建設、現在に至ります。

人と人との繋がりを

お客様との関わりの中で大切にしていることは、先ず自分を信頼してもらう事だそうです。「打合せの8割は世間話です」と語る勝又氏。お客様の懐に入り、商談だけでは引き出せない施主様の考えや故人に対する気持ちを理解した上で、葬儀の内容について提案を行っています。また、市内にある多くの寺院からも絶大な信頼を得ており、「自分の役割は、施主様と寺院との間に立ち、より良い会葬を提案する事」と語っていました。


取材時の様子

同友会で創った提案型の経営指針

様々なお客様と接して感じるのは、近年葬儀の簡素化が進み、本来の意義が失われつつあるという事でした。また、家族葬や直葬なども近年増加しているとの事です。そこで「盛大ではなくとも、ゆっくり故人を偲びお別れができるホールの提案」を重点対策として、3月例会で新しい経営指針を報告されました。そこには、お客様や寺院から深い信頼を得ている勝又氏ならではの、「故人中心の、人と人のつながりがある葬儀」を提案する指針が報告されました。

取材・原稿:大川 隆久氏(フヱタ工業㈲・御殿場支部)
取材:勝間田 誠氏(㈱文化堂・御殿場支部)
取材:勝又 茂生氏(㈱勝又製茶・御殿場支部)
取材:本多 丞次氏(㈲銚子屋・御殿場支部)

今回のテーマは労使見解についてということで、社長就任から5年になる河原崎哲哉氏(シンコーラミ工業㈱)の報告でした。

会はこんなくだりから始りました。「何であんな社員をまだ残してんだ!!あんな人材はいないほうが会社の為だ!!」これは、河原崎氏が入社して間もない時に社長に言った言葉でした。経営者としてあらゆることを学んできた中でもっとも大事なことに気付いたことにより今では猛省しておりました。

勿論大事なこととは社員を思うこと。入社してからも今でも最も重要に思っているのは社員とのコミュニケーション。ただ単に普段の何気ない話をするのではなく相手の話をよく聞く事を重点に置いているそうです。時には悩み相談なども受けると言います。

先代の社長(現会長)へ最も感謝していることは、採用を早くやらせてもらったこと。このことにより事業継承時によくある問題(経歴が長い社員との軋轢、兄弟親戚関係)はすべてクリアになったそうです。

しかしこれは誰もが簡単に出来る事ではなく、持ち前の人間性、常に明るく誰とでも分け隔てなく言葉を交わせるオープンな人柄だからこそ出来るのだと思います。

採用面接で必ず聞く事は、『あなたは運が良いですか?』だそうです。運が良い人の集団をまとめ上げ、共に良い職場つくり、共に学ぶことによって会社を更に飛躍をさせると誓っていました。

大澤 秀明氏(㈲オオサワ商会・富士宮支部)