会員インタビュー|㈱アルプスカーモーター 芦沢 玲欧奈氏(静岡支部)

カテゴリー:静岡支部

「定年まで、わが社で働いてもらえる会社」をめざして

小回りと信頼を強みに、変化を続ける経営

株式会社アルプスカーモーター 代表取締役社長 芦沢 玲欧奈氏

静岡市葵区牧ヶ谷に本社・工場を構える株式会社アルプスカーモーターは、1985年の設立以来、新車・中古車販売、車検・整備、板金塗装、自動車保険、ロードサービス、カーリースなど、自動車に関わる幅広いサービスを手掛けてきました。メーカー系列に属さない独立系の総合カーショップとして、地域の顧客一人ひとりに向き合いながら事業を展開しています。

大手ディーラーとは異なる中小企業ならではの強みは何か。これまでの経営で何を変え、何を残してきたのか。2026年9月4日、代表取締役社長の芦沢玲欧奈氏を訪ね、経営の歩みと現在の取り組みについて話を伺いました。


「何でもやる」から、自社の軸を定める経営へ

アルプスカーモーターの強みについて尋ねると、芦沢氏は「中小企業ならではの小回り」を挙げます。事故やトラブルの連絡が入った際には、連絡を受けた者が状況を把握し、必要に応じてそのまま現場へ向かうなど、できる限り迅速に対応することを大切にしています。困っているときに話が途中で別の担当へ回されるのではなく、最初に話を聞いた者がすぐ動いてくれる。そのことがお客様の不安を少しでも早く和らげ、結果として「何かあったときに頼れる会社」という信頼の積み重ねにもなっています。

その姿勢は販売にも表れています。芦沢氏は「車を買ってください」と顧客にお願いしたことがないといいます。「お客様とは対等な関係でお付き合いしたい。車を買う必要がないと思えば、私は売りたくありません」。時には一時間以上話し合い、本当に必要だと納得できなければ販売を進めないこともあります。目先の売上より、長く付き合える関係を重視しているのです。

一方、約20年前には、顧客から求められることにできる限り応えようと「何でもやる」姿勢で仕事の範囲を広げ、社員が疲弊した時期もありました。そこで一度、業務を販売と修理に絞り込み、自社が何をする会社なのかを見直しました。その後は自社の軸に沿って必要なサービスを加え、現在の総合的な事業体制を築いてきました。

先代から受け継いだものと、変えたもの

2020年頃に事業を承継した芦沢氏が、先代から受け継いだものとして挙げるのは、「お客様に対する真摯な姿勢」と「できるだけお金をかけずに事業を行う」という感覚です。一方で、残業を減らすことと、会社の利益構造は意図的に変えました。

2017年頃から、単純に売上高を伸ばす経営から、粗利率を意識する経営へと転換しました。売上が増えても利益が残らなければ、社員の待遇改善や設備投資、将来への備えはできません。そこで、従来外部へ委託していた仕事の中から、大きな投資をせず自社で取り組めるロードサービス、保険、自社リース、自社ローン、レンタカーなどを事業化し、利益を確保しやすい体質へと変えていきました。

金融機関、取引先との関係を経営資源に

他の経営者団体で出会った先輩経営者から「これからはリースの時代が来る。小規模からでも始めたほうがいい」と助言を受けたことも転機となりました。カーリース事業を育てる中で、芦沢氏は金融機関との関係づくりを重視するようになります。

資金が必要になったときだけ相談するのではなく、経営理念や会社概要、決算内容、利益予測や利益計画を資料にまとめ、自社の現在と将来を継続的に伝える。その積み重ねによって、金融機関からも信頼される関係を築いてきました。

一方、効率化のためにすべてを内製化すればよいとも考えていません。先輩経営者から、外注を減らした結果、コロナ禍の際に支え合える取引先や企業仲間が少なくなっていたという経験を聞き、企業同士の「共存共栄」を意識するようになりました。社内で改善できることは内製化しつつ、単純なコスト削減だけを理由に協力会社との関係を切らない。日頃から築いた信頼も経営資源の一つだと考えています。

AIで効率化し、人が向き合う時間をつくる

現在進めているのが、AIやデジタル技術を活用した業務改善です。きっかけは、増え続ける書類と限られた社内スペースへの対応でした。2026年1月、若手社員がAIを使ってレンタカーや代車を管理するアプリを作成。その後も社員の要望を反映しながら、社内の簡易システムを改善しています。

現在では事務作業で15時間から20時間程度の作業時間が削減され、業務分担の見直しや残業削減にもつながりました。芦沢氏は、効率化で残業代が減る社員には、その分を基本給の引き上げとして還元できないかと考えています。

ただし、AI導入の目的は人を減らすことではありません。事務担当者にも、業務を減らすのは新しい事業に取り組む余力をつくるためだと説明しています。「お客様と向き合うところには、いくら時間を使ってもいい」と営業社員には伝えており、定型業務は効率化し、人にしかできない仕事へ時間を使うことを重視しています。

「定年まで働いてもらえる会社」をめざす

アルプスカーモーターの経営理念には、「全従業員の物心両面の幸福を追求し、弊社に関わるお客様、協力会社、地域社会に貢献する事」と掲げられています。芦沢氏は社員に対して終身雇用を掲げ、長く働ける関係をつくりたいと考えています。

同社では「せめて昼くらいは温かく、おいしいご飯を食べてもらいたい」と毎日会社でご飯を炊いて社員に提供しています。また、可能であれば業界水準より少しでも高い給与を支払い、残業を減らし、家庭で過ごす時間も大切にできる会社にしたいと考えています。

採用難が続く中でも、新しい人を採ることだけではなく、「今いる人たちにどれだけ感謝し、このメンバーで最大限どのような事業ができるのか」を考えることが先ではないかと芦沢氏は話します。目標として掲げるのは、「定年まで、わが社で働いてもらえる会社づくり」です。

経営を真剣に話せる同友会

芦沢氏が静岡県中小企業家同友会に入会したのは2022年9月です。同友会について尋ねると、「経営の話を真剣にできる場」と答えました。

カーリースへの取り組み、金融機関との関係、企業同士の共存共栄という考え方にも、他の経営者から得た学びが生かされています。聞いた話をそのまま真似するのではなく、自社に持ち帰り、自分の会社ではどう考えるべきかを検討し、実践につなげています。

特に印象に残っているのは、「社員が自信と誇りを持って仕事ができる環境をつくることが大切だ」という趣旨の例会報告でした。これは、芦沢氏自身がめざす会社づくりとも重なります。

小回りの利く会社から、信頼され続ける会社へ

今回の訪問を通して見えてきたのは、顧客、社員、取引先、金融機関との「信頼」を経営の基盤として捉える姿勢でした。必要のない車は売らず、顧客が困れば、最初に連絡を受けた者ができる限り迅速に動く。社員が長く働ける環境をつくり、金融機関には会社の未来を伝え、協力会社とは効率だけでは測れない関係を築く。そしてAIで効率化できる仕事は変えながら、人が顧客と向き合う時間は守る。

設立から40年余り。先代から受け継いだ顧客への真摯な姿勢を守りながら、利益構造や働き方を変え、新しい技術も取り入れる。その先に芦沢氏が描くのは、社員が自信と誇りを持ち、「ここで働き続けたい」と思える会社です。

________________________________________

会社概要

企業名 株式会社アルプスカーモーター
会員氏名 芦沢 玲欧奈(あしざわ・れおな)
役職 代表取締役社長
所在地 静岡県静岡市葵区牧ヶ谷2354
設立 1985年4月
事業内容 新車・中古車販売、車検・点検・修理、板金塗装、自動車保険、ロードサービス、カーリース ほか
経営理念 全従業員の物心両面の幸福を追求し、弊社に関わるお客様、協力会社、地域社会に貢献する事
同友会入会 2022年9月
公式Webサイト https://alps-car.com/

 

訪問日:2026年9月4日

訪問者:杉本由美、下坪壮介