私の逸品 第5回 地産地消と地域貢献の橋渡し 富士総業㈱ 込山正一郎氏(御殿場支部)

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富士総業込山氏

 今回は、11月2日(土)に御殿場支部設営で行われる第27回全県経営フォーラムの第5分科会(見学分科会)会場になっている、富士総業(株)の込山正一郎氏を訪ねました。総合解体・産業廃棄物処分・浄化槽清掃などを行っていた富士総業(株)が、2012年から新規事業として始めた木質ペレット工場。間伐材を利用したペレットの製造・販売を始めるに至った経緯や思いを語っていただきました。

 

【表紙写真】地産地消と地域貢献の橋渡しをする木質ペレット

会員企業名 富士総業株式会社 設立 1983年9月
会員名 込山正一郎 業種 廃棄物処理業
所属支部 御殿場支部 社員数 総数17名(パート含む)
会暦 1990年 入会(先代) 趣味 子育て 

 

今回お邪魔した富士総業(株)は、もともと駿東郡小山町および御殿場市のいわゆる「北駿地区」を中心に産業廃棄物処理や総合解体事業を行っており、リサイクル事業や環境保全事業に力を入れている会社です。

常に環境を意識した事業展開を行ってきた込山さんの耳に入ったのは、北駿地区の山の整理が進んでいない現状でした。山を守るために行われる「木の間引き」である間伐。ところが間伐された木は、木材価格の低迷や出材コストの増加により、伐ったまま山に残置する「捨て切り間伐」をされていたのが実情でした。そこで2012年より、この間伐材を利用して化石燃料に代わる「木質ペレット燃料」を製造・販売することになったのです。

山を守り、地域を守る間伐材利用

現在日本の国土面積の約70%を占めている山林のうち、およそ40%もの木々が何十年も前に人の手で植林された森だそうです。木が成長して葉が生い茂ると、密接した木々がお互いの成長を妨げ二酸化炭素の吸収力が低下したり、地面に日の光が届かないため降雨の吸収率が下がって土砂崩壊などの山地災害を引き起こす可能性が高まります。

その様な事態を防ぐために必要不可欠な“間伐”なのですが、この間伐材は適度な長さ、太さがあり用途があるにもかかわらず、先述の通り、出材コストに見合った木材価格が得られず、採算性から捨て切り間伐が多く見受けられたそうです。

この間伐材を何とか利用できないかと目を付けたのが「木質ペレット」。2009年頃から事業準備に入り、四国・高知県へ見学に行かれたそうです。高知県ではすでにこのビジネスモデルが出来上がっており、地域で出た間伐材を地域で燃料として消費する、まさに地産地消が行われておりました。また、間伐材利用が増えれば森の整備も進み、山も甦るので一石二鳥です。

また、込山氏が新たな事業に向けて準備をしている最中の2010年9月8日、日本列島を襲った台風9号によって小山町では1時間に120mmを超えるほどの大雨が降り、激甚災害指定を受けるほどの大規模な災害が発生しました。捨て切り間伐された木によって自然ダムが作られるなど、山の整理が進んでいないことも災害の一因として考えられたそうです。この出来事も、込山氏の背中をあと押ししたそうです。

そして2年の準備期間を経た2011年、木質ペレット工場が稼働し始めました。「売り物にならず放置されていた間伐材に価値を与え、山を健全にし、地域を守る事ができる事業なんです」と込山氏は語っていました。

ペレット工場

取材風景

地産地消が事業の要

富士総業でペレットに加工される原料は、すべて会社が位置する北駿地区で伐られた間伐材が利用されています。会社構内にはたくさんの原木がストックされ、ペレットに加工される日を待っていました。

間伐材の山

ここで生産されるペレットは「原木ペレット」と呼ばれる、皮つきのまま加工されるペレット。丸太のまま大きな粉砕機に投入され、おが粉状に粉砕されます。このおが粉をペレット状に固めるのですが、大切なのは水分量。原木は50%もの水分を含んでいるため、このままだと燃料として燃やすことができないそうです。

木材をおが粉にする機械の刃

そこでおが粉を乾燥機にかけて水分量12%まで乾燥させるのですが、感心したのはこの乾燥機の燃料。なんと、乾燥機で乾燥させたおが粉の一部を、自動的にボイラーに戻して使用しているそうです。乾燥機燃料がしっかりと自給自足されているんですね。工場内での「地産地消」と言ったところでしょうか?

乾燥させるボイラー

水分量は電子制御で

乾燥させたおが粉は、また加熱して機械にかけ、ペレット状に自動的に加工されます。固めるために何か接着剤のようなものを混入させるのかと思ったら、ここでも「地産地消?」・・・熱をかけることで木の成分をリグニンとセルロースに分解させ、このうちリグニンが接着剤のような役目をするために固めることができるそうです。このようにして、100%混じりなしの、北駿地区産木質ペレット燃料が完成します。

木質ペレット製造設備

完成したペレット

 

込山氏が強く語っていたのは、「地元の木を、地元の業者が伐採し、地元のウチがペレットに加工して、地元で消費してもらうことが大切なんです。ペレットに関わる各企業が、Win-Winの関係を保っていく事ですね」どんどん地方が疲弊してお金が外へ出て行ってしまう現状を、お金を外に出さず、地元で消費して回す形ができればいいと思うと語っていました。

 

今後のペレット工場の目標は?

夢がいっぱい詰まった地元の燃料「木質ペレット」ですが、やはり競合するのは化石燃料との価格だそうです。

1kgの燃料を燃やした時の熱量は、木質ペレットでおよそ4,500kcal。灯油が8,200kcalで、重油が8,700kcalだそうです。つまり、ペレットは重油と比較しておよそ半分の熱量。しかし燃料価格の比較では、キロ単価比較で重油価格の半分以下となるそうです。

ペレットストーブの販売もしています!

また、価格も安定して供給できるため、一見化石燃料に比べれば有利な気もしたのですが・・・。「ボイラー設備のイニシャルコストが問題です」と込山氏。ペレット用ボイラー設備は、通常(石油)ボイラーの3~4倍ほど掛かってしまうとのこと。だいたい、年間の燃料代で1,000万円程度使用しているお客様であれば、数年で回収できるそうです。

工場の当面の目標は黒字化。年間2,000トンの生産力をもつ工場ですが、現在は半分の1,000トンほどしか生産していないそうです。「大口のお客様や、ペレットストーブなど個人利用のお客様を少しずつ開拓して、積み上げていくしかないですね」と込山氏。

ただ、最後におっしゃっていたのは「ペレットを広めることで、山を身近に感じてもらい、理解を深めてもらえれば山の木がどんどんイキイキしていくと思います」との事。やっぱり、山の環境を愛してやまない込山氏なのでした。

込山氏

■取材・文:大川 隆久さん フヱタ工業㈲
■写真:片野 貴一郎さん ㈱モスク・クリエイション
■取材:勝亦 英樹さん 勝亦製材駿河鉄骨㈱
■取材:立道 浩幸さん ㈱蒼設計
■取材:勝間田 賢一さん ㈱駿河調査設計
■取材:遠藤 直樹さん ㈱マルエ